卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

公設地方市場の減少と再編‐公設と民設の接近、卸売市場カテゴリーの変化

(全水卸22年09月号より転載)

公設地方市場の民営化が相次いでいる。また、公設卸売市場を廃止するという今まで少なかったケースも目立つようになった。

中央市場と地方市場、公設市場と民設市場の垣根がなくなりつつある改正市場法時代において、公設地方市場はどのように変わるのだろうか。

7月号で「公共性と効率性の共存」をテーマに公設民営型市場について検証したが、今号は公設地方市場の変化に焦点を当て検証する。

1.卸売市場の減少

市場数の変化

 

R4年1月

(認定後)

R2年6月(認定前)

H24年3月(10年前)

H14年3月(20年前)

中央市場数

65

64

72

86

地方市場合計

907

1014

1144

1351

(うち公設市場)

(143)

(147)

(155)

(154)

(うち準公設場)

(31)

(31)

(38)

(37)

(うち民設市場)

(733)

(836)

(961)

(1160)

                    (卸売市場データ集及び農水省市場室発表により作成)

 

改正市場法によって認定された卸売市場は、令和4年1月段階で中央市場65市場、地方市場907市場となった。

中央市場は、ピーク時の91市場から10年前の2012年に72市場となり、5年前の2017年は64市場となった。

認定後に1市場増えているのは、青果・水産とは別の場所にある仙台中央市場花き部が「花き中央市場」として別に認定されたことによるものであり、この5年間、中央市場数は変わっていない。

11中央市場がある東京都の再編、4中央市場ある大阪府・大阪市の再編が残されているが、全国的な中央市場再編は一応の峠を超し、再整備と機能強化にシフトしつつある。

地方市場は認定前後で約100市場が減った。

2017年の地方市場数は1060市場であり、5年間で200近くの地方市場が減っている。

このうち公設市場は5年前の151市場から令和4年1月段階で143市場と8市場減である。地方市場全体の減少に比べると、公設地方市場はそれほど減少していないように見える。

しかし、地方市場の減少が続いていた平成10年代〜平成20年代に公設地方市場が減っていないのは、中央市場から公設地方市場への転換が相次いだことの結果でもある。

市場法の改正が論議され始めた平成後期から令和にかけて公設地方市場・準公設地方市場(第3セクター市場)の民営地方市場への転換や卸売市場自体を廃止するケースが多くなっている。

公設地方市場をめぐる再編・淘汰は今後さらに進むことになるだろう。

2.公設地方市場から民営地方市場への転換

公設地方卸売市場から民営地方市場への転換は2002年(H14 )の長岡市公設地方市場が第一号で、以下、次にあげる公設市場・準公設(第3セクター)市場が民営化された。

公設・準公設地方市場から民営地方市場となったケース

2002(H 14)

長岡市

2015(H 27)

上越市

2003(H 15)

北見市

2015(H 27)

新庄流通C 3セク

2004(H 16)

伊勢崎市

2015(H27)

日立市

2009(H 21)

桐生市

2016(H28)

十和田市

2010(H 22)

西脇 3セク

2016(H 28)

今治市

2010(H 22)

北勢 事務組合

2016(H28)

土浦市

2010(H 22)

石巻市

2017(H29)

栃木県南 事務組合

2012(H24)

藤沢市

2018(H30)

足利市

2013(H2)

舞鶴市

2018(H30)

富良野市

2014(H26)

富士市

2018(H30)

市川市

2015(H 27)

館林 3セク

2018(H30)

鳴門市

2015(H 27)

京都市花 3セク

2020(R2)

山陽小野田市

2015(H 27)

泉大津フラワーC3セク

2204(R4)

名古屋西流通C 3セク

2015(H 27)

香川中部 3セク

 (独自調査による集計である)

(山陽小野田市公設地方卸売市場は卸「小野田中央青果」が破綻し2020年3月に公設市場を廃止した。22年7月から青果仲卸フレッシュが開設者兼卸となり民営市場「山陽小野田地方卸売市場」としてスタートした)

民営化したケースをいくつかのパターンに分けた。

  1. 公設市場よりも卸の経営戦略上、有利であると判断して民営化したケース。長岡、石巻、富良野、北勢など。
  2. 卸の経営破綻により他市場卸の支援を受けて民営化したケース。北見、市川、伊勢崎など。
  3. 開設自治体の財政負担軽減のために市場業者に開設権を譲渡したケース。伊勢崎、桐生、栃木県南、上越、足利など、最も多い。
  4. 卸の経営は破綻したが他市場卸の支援を受けられず仲卸など市場業者が受け皿となって民営の市場開設者となるケース。館林、日立、岳南、山陽小野田など。
  5. 市場をコンパクト化し、余剰地に民間企業を誘致し収益化、民営化したケース。足利、今治、名古屋西など。
  6. 駅前、幹線道路など立地の優位性を活かし公設市場を移転あるいは廃止することで商業施設として再開発するケース。西宮、伊丹、加古川、日立、室蘭など。
  7. 準公設地方市場(第3セクター)から民営化するケース。

公設市場の民営化以上に第3セクター市場の民営化が広がっている。

行政と業界が共同出資して卸売市場を開設する第3セクター市場は「準公設市場」の名称が示すように法的には公設市場の位置付けである。

市場業者が最初から開設者に出資している第3セクター市場は、自治体出資分を民間に譲渡することで民営化することが比較的容易であることが、民営化するケースが増えている一因となっている。                                     

3.公設市場の廃止・廃場

公設・準公設地方市場の減少は、数字上では少ないのだが、実際は廃場となったケースは多い。

その転機が2014年に中央市場を廃場した横浜南部市場である。

この時期に卸売市場法の改正、規制緩和、日本経済の低迷、地方自治体の財政危機、等々が重なり、公設地方市場を廃場したケースが相次いだ。

廃場した公設市場数は2014年が2市場、15年3市場、16年4市場と増え、令和となった以降もさまざまなケースが出ている。以下、いくつか紹介する。

伊丹市場・日立市場・山陽小野田市場のケース

地方自治体も公設市場を維持するためにさまざまな努力を行っている。

伊丹市公設地方市場は、規模は小さいが青果、水産の総合市場として営業してきた。

平成18年に卸撤退後も営業を続けたが地方市場の要件であった卸売場面積が確保できず、平成20年に卸売市場としての資格を失い「その他市場」として営業、JA伊丹の支援を受け廃業した卸売場に直売所「スマイル阪神」をオープンさせたが市場としては浮上せず、「その他市場」も返上、「伊丹公設市場」としてスマイル阪神を核とした小売マーケットとなった。

行政が開設している小売市場は今もあるが、大正時代の米騒動後に作られ施設が今も残っているだけで、伊丹市のようなケースは珍しい。

伊丹市は一貫して市場を支援、公設のまま「その他市場」として運営し、さらに卸売市場では無くなっても「公設小売市場」として維持している。地域の食の拠点に責任を持って維持しようという地方自治体としてのスタンスが表れている。

同じケースが日立市場で、卸が破綻した後も日立市が施設を新しくして業界支援を行ったがうまくいかず、結局、やむなく大型商業施設として再開発された。

また山陽小野田市場の取り組みもある。卸が経営破綻し、継承する卸がないために「卸売市場」としては廃止されたが、営業を続けていた仲卸が2年後に卸となり民営化した。

同じく経営破綻した卸の経営を自治体が有力卸に経営支援を要請したケースが北海道の北見、士別市場である。いずれも道北の拠点「キョクイチ」が支援に入り、北見は民営市場として維持しているが士別は時期、内容等が厳しく、結局、断念せざるを得なくなった。

横浜南部市場のケースは今後も出るだろう

公設市場の廃止で話題となったのが横浜市中央卸売市場南部市場(横浜南部市場)である。

横浜南部市場は、2014年(H26年)に「卸売市場」を廃止し、「横浜本場の補完機能を担う施設」として17万㎡の市場用地を12万㎡の物流エリアと5万㎡の賑わいエリアに分けた。

統合によるものではない中央市場の市場廃止は初のケースであり、おそらく今後も出ないだろうと思われていた。

現在の横浜南部市場は、賑わいエリアの成功が大きくマスコミ等で取り上げられているが、17万㎡のうち12万㎡を占める物流エリアもまた大きな変貌を遂げている。

横浜丸中青果は、南部市場、横浜本場、藤沢市場の三市場を機能別に分社化し、横浜丸中青果としての配送、加工等は南部市場が主力になっている。

また横浜魚類も、現在、食品加工施設「南部ペスカメルカードⅡ」を建設中で秋には完成する。2014年の南部市場の市場廃止を受けて、それまで市場外で営業していたグループ企業「横浜食品サービス」の本社・工場を南部市場に集約し、横浜魚類の販売戦略上、横浜南部市場の加工配送センターは柱となる機能を果たしている。

「卸売市場ではない」横浜南部市場がなければ横浜本場の卸売市場機能は半減するだろう。

商物分離が認められるようになった今であれば、横浜南部市場のようなケースは「市場廃止」ではなく一つの中央市場として統合し、業務は2か所で行うというスタイルが可能ではないだろうか。

また東京都の場合、人口は多いが一つの自治体に11の中央市場を置く必要性は薄くなっている。都内の二つの中央市場に本社、支社として営業している卸もある。

改正市場法時代における主要な課題は物流と情報による効率化であるが、同時にコロナ禍による国内産業基盤の強化として、農業・漁業の振興、防災機能や食料備蓄機能など食料安定供給を担うサプライチェーンマネジメント(SCM)構築も求められている。

東京は日本の首都としてこうした課題に取り組む中心的役割が求められる。その食の分野における課題に取り組むことは東京の卸売市場として当然の責務である。そうした視点で見るならば、東京11の中央市場は多すぎるのではなく、こうした公共的課題・地域のインフラ機能を担う卸売市場のSDGsとして市場機能の多様化を実現できる有利な条件があるとも言えるだろう。

横浜方式を含めた多様な市場再編・機能強化を期待したい。

 

卸売市場を廃止した公設・準公設地方市場(公設から民営化後に廃場した市場も含む)

2014(H26)

横浜南部

中央市場

青・水

中央市場を廃止し本場の補完機能として物流エリア12万㎡と賑わいエリア5万㎡に分け再開発。

2014(H26)

今治市

青・花

今治市公設地方市場を公共施設として評価・あり方を検討し廃止。

2015(H27)

神栖市

公設鹿島地方卸売市場 都市計画で廃止決定

2015(H27)

伊丹市

青・水

H18年の青果卸撤退後、H20年に卸売市場を廃止、その他市場として営業、H27年に市場も廃止「伊丹市公設市場」として営業。

2015(H27)

日立市

青・水

卸経営破綻後も日立市が施設整備し運営してきたがH27 年12月末で閉鎖、大型商業施設として再開発

2016H28

柳井市

二ヶ所の産地市場統合計画を断念、都市計画変更、公設地方市場廃止

2016(H28)

松戸市北部

親会社、東京シティ青果の経営戦略で再編・廃止

2016(H28)

日光市

日光市公設地方青果市場、日光地区総合食品卸売の撤退で廃止。

2016(H28)

竜ヶ崎

3セク 茨城県南流通センター 卸の経営破綻で廃止,し農産物直売所に

2018(H30)

日向市青果

3セク 日向市、JA日向、市場業界が出資。経営破綻により廃止。

2019(R1)

士別市

青・水

旭一が支援に入るも断念、市場廃止、清掃車両センターとして活用。

2019(R1)

西宮市

JR駅前にあり老朽化再整備で隣地の民設地方市場と統合移転、公設市場部分は再開発を行い、市場業者は全店、民設地方市場で営業。

2020(R2)

山陽小野田

青果卸破綻で廃止となった。22年に仲卸が卸・開設者となり民営化

2021(R3)

室蘭市

青果と水産2市場あり、青果は移転計画も移転先が決まらず、跡地はイオンが優先交渉権、移転が難航する中で卸の経営破綻により市場廃止。

2022(R4)

小樽市

3月末で公設市場廃止。樽一小樽中央青果負債3奥で特別清算。札幌みらい対応。

2022(R4)

加古川市

青・水

青果卸が廃業、水産卸も売上低迷で廃止決定、存続要請で2年間延長、8社が管理組合をつくり営業継続。

2022(R4)

伊勢崎市

青・水

公設地方市場から民営化したが22年6月に廃止決定、年度内暫定使用

4.まとめ〜「開設」の役割変化

以上、公設市場から民営市場への転換、廃止等を通じた卸売市場の様々なケースを見たように、実践的にも中央市場と地方市場、公設市場と民設市場といった従来の卸売市場のカテゴリーそのものの垣根がなくなりつつある。

また卸売市場の機能も変化し、「卸し売りをする場」としての機能だけではない役割が求められるようになっている。

規制緩和とインフラ機能、二つの流れによって再検討されなければならないのが開設者の役割変化である。

PFIと指定管理〜「開設者」の役割変化

旧卸売市場法において開設者は、市場業者に対する取引規制や管理監督の業務が条例上に多く規定されていた。公設市場の場合、必然的に行政が、開設者として取引業務や施設の管理運営を日常的に行うことが必要であった。

しかし市場法とPFI法の改正、地方自治法の改正による指定管理者制度によって開設者が「公」であっても、市場の管理運営を民間に委託することができるようになった。

PFIは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブという名称が示すように当初は公共施設の建設に民間資金を投入させることで行政の財政負担軽減を図る目的であった。

しかしPFI事業者は投資の回収に数十年かかり、損はないが投資するメリットも薄かった。そこで民間資金の活用だけではなくPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)、行政と民間が経済協力するという幅広い考え方が導入され、国の政策も「PFI・PPP」として出されるようになった。

これによって公共施設の建設・管理・運営を一体化した民間委託が可能になり、PFIの選択肢は一気に広がった。

このPFIの弾力化とセットになる考え方が指定管理者制度である。

PFIが弾力化され、完成した公共施設の経営まで委託することが可能になっても、民間ディベロッパーには管理のノウハウはあっても公共施設の経営ノウハウはない。

そこで全ての公共施設を新しくする際は指定管理者制度の導入を検討することが義務つけられたのである。

人材派遣とあわせて公共施設への指定管理者制度は広がり、民間が経営責任を持つ公共施設が増えたのだが、卸売市場の分野ではあまり機能していない。

それは、卸売市場は電気や水道のように住民サービスを直接行う公営事業ではなく「民間業者が多数いる公共施設を経営する」公営事業だからである。

さらに旧卸売市場法による管理・監督・許可などの行政権限を民間に委託することができないことも指定管理者が充分に機能しなかった一因であった。

その結果、業務の一部、施設補修や施設使用料の徴収などを行うことで行政開設者の職員数を減らすだけの指定管理者が多く「市場経営」という機能はあまり果たされていない。

そうした行政の開設者業務が、改正市場法によって大幅に簡素化され、開設者の役割は「市場業者の監督・指導」から「市場経営の健全化」となった。

これまで述べてきた公設市場の変化も、こうした市場流通の変化に対応した変化であり、開設者の役割の変化である。「公設公営」と「民設民営」に分けられていた市場のカテゴリー化(分類)も再検討が必要になるだろう。

卸売市場のカテゴリーの変化

農水省による卸売市場の分類は、開設形態による分類としては公設、準公設、民設であり、法的な分類は中央市場、地方市場、その他市場である。

そして中央市場は全て公設であり、地方市場には公設、準公設と民設がある。その他市場は全て民設である。

開設者の権限・義務が強かった時代は「開設=管理運営」であったが、市場の開設と管理運営が分離されるようになり、公設は必ずしも公営とは言えなくなっている。

こうした視点で卸売市場を分類すると次のようなカテゴリーとなるのではないだろうか。

①公設公営市場 

市場用地施設を行政が所有し指定管理者を置かず管理運営する市場。従来の中央市場、公設地方市場、第3セクター市場の多くが入る。

②公設民営市場 

市場用地・施設を行政が所有し指定管理者によって市場の管理運営を民間に委託している市場。

指定管理者が本来の役割である「市場経営体」としての機能を果たしている大阪府中央卸売市場がある。しかし、指定管理者制度は3年、5年の契約期間の縛りがあり民間企業としての継続性が保証されていない以上、経営体としては限界がある。指定管理者制度を導入している公設市場の多くが行政の職員は一人か二人で、日常の市場管理運営は指定管理者が行政の実務補助を行っている。行政は開設権を持っているが日常的な市場管理運営をやっておらず「公設民営」となっている。

③公有民営市場

市場用地・施設を行政が所有している点は公設民営市場と同じだが、市場を物理的に行政が所有しているだけで開設権を民間に譲渡し民営化した市場。

土地建物を公有のままにして固定資産税等の民間負担を軽減させているのだから第3セクター市場と同じ機能とも言える。藤沢、栃木県南、桐生、館林等、公設市場を民営化した市場。

④民設民営市場

現在の民営市場の多くが民設民営である。地方市場として行政が認定した民営市場。

⑤民有公営市場

民間が建設した施設を行政が借り、行政が開設者として管理運営も行う市場。富山市場が導入した。今後PFIの進展によっては更に増えるかもしれない。松戸南部市場も似ており、民間施設を行政が借り開設者となったが、日常的な市場管理運営は民間が行なっている。

中央・地方、公設・民設に関わりなく今後も市場数はまだ減るだろう。しかし市場数の減少は必ずしも市場流通の衰退ではなく再編である。時代が変われば市場の役割も変わる。市場数の減少も時代の変化である。

今後の市場流通はコンパクト化と公有民営による再整備とコロナ禍を契機に卸売市場の重要な機能となった食の分野におけるインフラ機能、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を軸に再編が続くだろう。