卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

私の好きな美術館−その7佐川美術館(滋賀県守山市)、MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)

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佐川急便創業40周年に開館した佐川美術館(竹中工務店設計施工・同館ホームページより)

関東に住んでいる人にとって、滋賀県はあまり馴染みがないだろうと思います。
私は仕事でよく行きました。関西の中でも存在感が薄いようで、昨年ブレイクした漫才の「ミルクボーイ」が滋賀県は特徴のないところが特徴とネタにしています。

そんなことはありません。滋賀県を軽く見るのは関西人の驕りです。
滋賀県は琵琶湖と比叡山があり、鮒鮨があります。ヒコヤンがいて長浜ラーメンがあり、ガラス工芸も信楽焼もあります。

鮒鮨は熟鮓(なれずし)で、何年も漬け込んだ鮒鮨を地元の方から頂いて、あまり美味しかったので長浜駅前の平和堂でお土産に買いました。
一時、ブラックバスが増えて琵琶湖の魚が激減しましたが、自治体・県民の努力で復活しつつあります。

富士山は静岡と山梨どちらから見てもいいように、比叡山は京都と滋賀どちらもいい。個人的には山と湖がつながっている滋賀の方がいいと思います。
紫式部が滋賀県大津市にある石山寺で源氏物語を書き起こしたと言われています。住むには大変魅力的です。

佐川急便の企業ステータス上げる「佐川美術館」

佐川美術館は「佐川急便」が開館した美術館です。
運送会社は仕事柄、荒っぽいイメージで「美術館」を連想することは難しい。
そう思うのは偏見です。私がそうでした。

それだけに、実際に佐川美術館を見て、あまりの美しさに驚きました。広い水の中に浮かんでいるような建物が素晴らしく、遠景の比叡と調和して優美です。

佐川美術館は、佐川急便の企業としてのイメージアップにとどまらず企業としての高い品格を感じます。企業の社会貢献としてもっと評価されても良いと思います。

樂吉左衞門、佐藤忠良、平山郁夫が中心

佐川美術館のセンスの良さは外観だけではありません。収蔵美術品は陶芸家の楽吉左衛門、彫刻家の佐藤忠良、日本画家の平山郁夫の作品を中心に展示しています。
この三氏に絞った選択眼のセンスが光ります。

「楽吉左衛門館」はその「品格」にふさわしい展示がされています。窓の外は池の水中です。水に浮かんでいるような茶室で見る黒釉の茶器は言葉を失うほどの美しさです。
私が行った目的は佐藤忠良です。特別展示をやっていて、代表作「帽子」シリーズはじめ満喫しました。

会場で佐藤忠良の大型本とポスターを買いました。売っている方の「出版社が潰れ余った在庫品の安売りで・・」と寅さんのような口上に乗せられ、確かに安かったのですが重い本を抱え「隣の佐川配送センターで宅配できますか」と美術館受付の女性に聞き、笑われました。ポスターは今も大田市場記者クラブに貼っています。

MIHO MUSEUM(ミホ ミュージアム)

ミホ ミュージアムの規模と収蔵品の多様さも驚きです。
宗教団体『神慈秀明会』 の開祖・小山美秀子が設立した美術館で開祖の名前が美術館の名称になっています。熱海の「M O A美術館」と似ていますが、別の宗教団体です。

「自然と建物と美術品」「西洋と東洋の融合」がテーマで、滋賀県甲賀市信楽町にある山全体が一つの美術館になっています。

石山駅からバスが出ていますが、着いてからエントランスまでが長く、建物の設計も有名です。収蔵品も国、時代、分野を跨いで買えるものは全て買ったのではないかと思えるほどです。

数百億円と言われていますが、豊富な資金力で古代文明の仏像や遺跡発掘物、日本の古代からの各分野等々を網羅した約3千点の収蔵品は、どの分野を中心に収集したというレベルではありません。どこから購入できたのかと驚くほど多岐にわたっています。
その中に思いがけず伊藤若冲や俵屋宗達の小品なども混じっていて、誰だかの言葉を借りると「美術品の巨大な宝箱」です。