卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

鯨尾肉を食べた

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9月28日 仙台市場上場記念!/仙台水産グループ海鮮市場HPより

クジラの尾肉を刺身で食べたーこう言えば市場関係者なら誰もが羨むだろう。
だから書こうと思う。
2021年9月28日、ニタリクジラが仙台市場に上場され、最高値キロ赤身7000円、尾肉10万円と豊洲市場を上回る値段をつけた。捕獲時から冷凍せず生鮮のまま刺身で食べる。
私は九州育ちでクジラはよく食べた。東京でもスーパーで見かけるようになって、たまに食べようかと思うが値段を見て買わない。

業界紙時代、共同船舶の試験操業で揚がったくじらの試食会に時々行って食べたがそれ以来だろう。サシの入ったクジラ肉は初めて食べた。やはり魚とは違う。芳醇な美味しさというのだろうか。どこで誰と食べたかは省略する。

みのりの秋も盛りである。幸い、コロナの感染者数も減っている。なぜ減っているのか不明ということだが、選挙が終わればまた増えることにならないことを願うばかりである。
もともと秋は業界の会議も多い季節だが、今年はコロナ禍もあってか、オンラインのセミナーや研修会が密になっている。

ここ1ヶ月くらいで、個人的に参加したいと思い、参加、あるいは今後参加予定しているオンラインのセミナーだけでも、全国生鮮流通フォーラム、水産流通適正化法等説明会。生鮮取引電子化オンラインセミナー、市場流通ビジョンを考える会、地域漁業学会ミニシンポジウムと続く。

その中から「水産流通適正化法」の説明を聞いた感想を書く。

まず、これは密漁防止には大して役立たないだろうと思った。
令和2年12月に公布された「水産流通適正化法」は特定第1種の3魚種(アワビ、ナマコ、シラスウナギ)と特定第2種(サンマ、イカ、サバ、マイワシ)の4魚種を対象に密漁防止を目的とした法である。2年後に指定基準と指標を見直すことになっているが、アワビやナマコの密漁防止が今、水産業に最も必要な課題なのだろうか。

密漁防止にも大した役には立たないだろうし、IT化を進めるツールにはなるが、6ケタの荷口番号を義務つけることは罰則規定があってもヨーイドンで守ることができる法制度ではない。それだけの社会的な緊急性があるとも思えない。

しかし対象魚種は「実行が容易である」という指定基準にはぴったりであり、16ケタのコードを簡素化できるならば、取り組むこと自体は難しくはないだろう。密漁防止には役立たなくとも長期的にはデメリットよりメリットが大きいと思う。

メリットは遅れているIT機能強化に向けて実行しやすいだけではない。今後の漁協の販売戦略にとって重要になるブランド化など付加価値を創造するためのツールとしても有効だろう。
また現在多くの漁協で取り組んでいるHACCP対応の施設とともに、水産物の品質維持を図り適正管理を進めるツールとして、市場業界にとって水産流通適正化法のメリットは大きいのではないだろうか。