卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場再整備に「サウンディング型市場調査」導入

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サウンディング型市場調査を行う川崎北部市場(168,587㎡)ホームページより

(参照)川崎市:川崎市中央卸売市場北部市場の機能更新に関するサウンディング型市場調査の実施について

 

最近、卸売市場の再整備に「サウンディング型市場調査」の手法が使われ始めている。

各地の公共施設に導入されていおり、平成30年は国交省が「地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き」を出している。卸売市場では福山市地方卸売市場と川崎市中央卸売市場・北部市場で実施されている。

手引きによるとサウンディングの特徴は「サウンディングは、事業発案段階や事業化段階において、事業内容や事業スキーム等に関して、 直接の対話により民間事業者の意見や新たな提案の把握等を行うことで、対象事業の検討を進展させるための情報収集を目的とした手法である。また、対象事業の検討の段階で広く対外的に情報提供することにより、当該事業への民間事業者の参入意欲の向上を期待するものである。」としているがわかりにくい。

最大の特徴は行政が再整備の方式を決める前に民間企業からアイディアを提供してもらい、選定した業者と施設配置や工事手法、完成後の運営まで決めるPFI(パーソナル・ファイナンス・イニシアティブ)の進化系である。

特に指定管理者制度でネックとなっていたのが、行政とPPP(パブリック・パーソナル・パートナーシップ)を組む民間企業のメリットが少ないということである。この点を改善したのが市場用地を縮小した「余剰地の活用」である。

この「余剰地」の活用で市場会計や市場業者の使用料負担軽減に充てることにしているが、果たしてこれが負担軽減になるのか、京都市場で行ったホテルや賑わいフロア方式が他市場でも通用するか加工や物流施設で収入を確保するか、難しい選択となるだろう。

以下、参考までに川崎北部市場のおける「サウンディング型市場調査」の概要を紹介する。川崎市はこの国交省の手引きに従って、「民間事業者の皆様に提案を求める内容」として以下の3点を提示している。

  1. (ローリング工事計画を含めた)最も効率的・効果的な「整備パターン」及び「民間活用の手法」並びに「施設配置」
  2. 「整備後の維持管理・運営」の業務範囲
  3. (市場をコンパクト化した場合)発生した余剰地の活用方法

参加は調査事業応募の条件ではないが個別現地見学会を開催し(9月14日(月)~29日(火)のうち市が指定する日)、10月9日(金)までに『サウンディング調査参加申込書(様式2)』をメールし、選定された企業は12月3日〜18日までサウンディング調査を実施する。
つまり「サウンディング型市場」とは、事前に行政が民間企業から①現在地再整備を前提に、②卸売市場部分を縮小し、③余剰地を民間活用することで市場会計負担を軽減し、④再整備の構想、工事、完成後の事業運営までの考え方を提案してもらう「官民連携」で、これまで行ってきた指定管理者や民間資本の導入を図るPFIと同じ考え方である。

厳密に言えばPFI等とは違うが、考え方としては民間活力導入である。こうした考え方はすでに京都市場や豊洲市場でも行われている方式で、今後、このサウンディング方式の考え方を取り入れた再整備計画を検討する市場が増えるだろう。