2019年8月21日〜23日の三日間、東京豊洲のNTTデータ本社において「全国生鮮流通フォーラム」(パーソナル情報システム、NTTデータ関西主催)が開かれた。以下、講演者の講演概要を順次紹介する。
人口・食料消費に大きな変化はない
「変化」をキーワードに、法律の改正にどう対応していくのかをテーマに話す。
わが国における人口減について、1970年と直近の2018年を比較すると、それほど一気に減っているわけではない。1億3千万人近くの国民が食べる食糧が必要であり、これをミクロ的に食料自給率、家計調査で見ても、傾向としては青果や水産が減り、畜産が増えているが、驚くほど減っているわけではない。
魚介類も直近の数字波形を見ると、マーケットはシュリンクというよりは横ばいである。
生産、流通、技術革新は大きな変化
それに対して、はっきり変わっているのは次の点である。
第一は野菜出荷者の構成で系統の比率は6割で変わらないが、農協の数が大きく減って山地の大型化が進んでいる。
第二は買い手で、仲卸と買参人の数は減っているが、青果も水産も、その存在感は大きくなっている。
小売店は大きく減っているが、減った分は専門小売店で、量販店は市場の主要な顧客になっているし、残っている専門小売店は大型化し存在感が強くなっている。
次は周辺の変化で、道路整備とトラック、90年代から本格化したITやカーナビ、バーコード、QRコード等の発達で周辺の環境は大きく変化した。
他省がまとめているものだが、技術面では情報社会から人間中心の社会に融合する「Society 5.0」、キャッシュレス、RFID、自動運転技術など技術革新は大きく変化している。
変化に対応するための市場法改正
市場数の変化について、75年を100とした数値で見ると、90年代に向けて上がっていき、2000年代に入り、ダウンの波形が少しきつくなっているが2010年を過ぎた頃から緩やかに微減、微増になっている。
市場の存在のシェア、ボリューム感は、数の減少でもたらされているのではないか、各社が同じマーケットに直面しているわけではない、金額の変化は数が寄与する面が大きく、一つの市場が受けている変化はそれほど大きく変わっているわけではない。
こうした変化に市場流通を対応させるために市場法が改正された。
改正の変遷は資料の通りで、許認可制から認定制に変わり行政のアプローチが違う。共通ルールは維持するが取引の一律制限はやめ、認定の要件は資料の10項目だけとする。
整備計画も廃止し、開設は民間でもでき、いつ、どこに、どういう対象で作るか、国が決めるのではなく民間が判断する。
変化への対応のヒントと財政支援
こうした変化に対応し、現場のイニシアでアクションしやすい施設整備を応援していく。
取引ルールは取扱品目ごとの実情に応じて市場の活性化を図る観点であり、市場施設を有効活用する新規の取引参加者の参入を促すためでもある。
施設整備については、物流、情報、品質管理、輸出の4点のほか、市場の役割に支障を及ぼさない範囲での施設の有効利用がある。このために食品等流通合理化制度を改正し、支援措置を拡大し、債務保証、海外での借り入れに対する債務保証、資金貸付、A—FIVEの出資などの支援を拡大した。
これまでの市場は、市場関係事業者がいて、その事業者のための施設と業務規程が中心だったが、今後は集荷、評価、分荷を包括する市場のプラットフォーム化が必要ではないか。
市場の専門性、独自性の優位を維持するためには、対応はどの領域か、誰が何をするのかの「付加価値領域と費用領域」それを具体化する「協調領域と競争領域」を明確にして、「見える化」しないと先に進まない、「ネットワーク」という言葉は陳腐化しているが、市場独自の優位性を維持できないときは個々の優位性を共有しないと始まらないのではないか。
例えばデータ化の自動化、効率化は技術面ではクリアしており、そのデータの共有化を実現すれば優位性を発揮できるのではないか。
そうしたプラットフォーム化に向けて、①調査・仮説構築、②実証、③実装の三段階がある。国としても代金決済やデータ活用についての調査を行っており、そこからRFIDを活用したトレサビや共同配送、決済の自動化、パレットの循環とうの実証事業を行い、実装へとつなげて行きたい。
実証事業としては「輸出拠点・流通新技術導入モデル」に平成31年度予算の概算1億5千8百万円、実装支援として「農業生産関連事業の事業再編・事業参入、流通構造改革にA—FIVE支援枠125億円、政策金融公庫融資枠6,560億円が、また強い農業づくりの食品流通拠点施設整備、共同物流拠点施設等への実装支援として平成31年度予算概算230億円が決定している。
計画している市場、計画しようと考えている市場があれば市場室に相談して欲しい。