卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

丸勘山形青果市場の果たす役割(上)−「改正市場法と地方卸売市場」粗利10%、経常3%の衝撃

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改正市場法下で大きな課題となるのが地方市場の方向である。

市場法が変わっても、現実の市場流通には大きな変化はないだろうという見方も多い。
しかし変わる。とりわけ地方市場は変わる。

卸売市場の減少が、そのまま市場流通の衰退に結びつくわけではないが、改正市場法の下で、千に及ぶ全国の地方卸売市場が、市場主議経済の大海に投げ出されるのである。

多くの敗者は出るだろうが、必ず勝者も出る。

分岐点は規模でなく機能である。

その機能の先進は常に民営市場が担ってきた。

これまでもキョクイチや弘果、石巻青果、熊本大同青果など紹介してきた。

「改正法と地方市場」の視点で「勝者」をめざす全国市場の取り組みを紹介していく。

今号は「マルカン」の名称で知られる「丸勘山形青果市場」(丸勘山形:佐藤明彦社長)である。

丸勘山形の歴史〜年商10億円から131億円に

山形丸勘はなぜ伸びたのか、その検証に移る前に、まず、この数字を見ていただこう。

 

山形公設

丸勘山形

天童

寒河江

東根

新庄

合計

数量

30,790 t

74,471 t

7,274 t

2,201 t

4,950 t

578 t

120,264 t

占有率

25.6%

61.9%

6.0%

1.8%

4.1%

0.5%

100.0%

山形全県の62%シェア

山形県内7市場の年間取扱量とシェア率である。

新庄は第3セクター市場であったが。平成30年に民営化されていて、山形地方市場以外は全て民営市場である。

丸勘山形が6割を超え、かつて中央市場であった山形公設の2倍以上である。

「マルカン」という名はよく知られているが、山形県下におけるシェア率がこれほど圧倒的であることに改めて驚く。

数量でこれほど他市場を圧倒するのは、よほど薄利多売に徹しているのだろう。誰もがそう思う。私も思った。

粗利10.54%、経常3.3%の衝撃

数字は少し古いが2016年度の決算数字である。

売上127億円 前期比111.4%(野菜89億、果実38億)
売上総利益率 10.54%
営業利益   3.13%
経常利益   3.30%
当期純利益  2億9200万円 2.30%
流動比率   297%
自己資本比率 69%

 

2018年度は売上131億円である。財務内容も変わらない。

粗利が10%を上回る卸は全国でも断然トップである。

周知のように野菜8.5%、果実7.0%が法定手数料率である。
仲卸であれば10%をこす粗利でなければコストが賄えないが丸勘山形は生産者から全量受託である。

さらに営業利益、経常利益も共に青果卸としては考えられないほど高い。

説明するまでもなく市場関係者ならば、この数字を見ただけで丸勘山形がいかに卸売市場の常識を覆しているか驚くだろう。

 

驚くことは他にもある。

「開設時の平成元年には年商10億円だった」

「民間業者が統合して卸売市場を開設したのではなく前身は問屋1社だった」

「至近距離に山形市中央卸売市場があった」(平成22年に地方市場転換)

「当時の山形中央市場は青果卸2社、水産卸2社の県内唯一の総合市場だった」

細かい市場の歴史は不要だろう。

「中央市場と地方市場が競合すれば地方市場が勝つわけがない」はずなのに、丸勘山形は伸びたのである。