卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

年商1500億円を視野に−R&Cホールディングス首都圏での存在感強まる(下)

(上)の続きです

2.R&C物流 長野県下の物流一本化

セントライ青果の統合の際、まず丸市青果と名果の物流部門の一本化が図られたように、R&Cのサプライチェーンを支える柱が2017年(平成29年)4月に設立されたR&C物流(本社:長野市)である。

レンゴー青果運輸と長印エキスプレスを統合し、社長にレンゴー青果運輸の牧野有一社長、専務に長印エキスプレスの畦上定良社長が就任した。

資本金4950万円、従業員129人、年間売上25億円。 

トラックは全て自社の所有で120台。長野、上田、松本の3市場を拠点に重なる物流ルートを一本化している。自社の取扱いの配送を全て自社便でカバーする例はあまりない。
120台というと、本来の5年償却を10年持たせたとしても、1年に12台は毎年補充しなければならない。

「大型トラックは1台で2千万円しますから毎年2億円以上の支出になる、決済のハンコを押すたびに金額の大きさに驚きます」と堀社長は余裕で笑う。

人材確保、働き方改革等で運送企業の経営は年々難しくなっているが、牧野社長、畔上専務のリーダーシップで労務改善等の取り組みが順調である反映だろう。

R&C物流は、改正市場法以後、広域集散市場の卸としてR&Cが機能するための、本格的な力を発揮することになるだろう。

3.長印船橋青果の取り組み 船橋、市川の統合で250億円売上

R&Cとしての首都圏戦略は着実に進んできた。

連合青果は平成8年に初めて県外の群馬県伊勢崎市に進出、平成14年12月には累積損失を抱えて経営危機に陥っていた東京板橋の東京富士青果を買収、僅か3年も経たない平成17年3月期決算で累積損失を一掃し黒字経営に転換した。

今も健全経営を維持している。

同じく首都圏進出が長い間の懸案であった長印は、03年(平成15年)に千葉県市川公設地方卸売市場に進出、12年(平成24年)には、船橋中央卸売市場の青果卸部門を引継ぎ、長野県の地方市場卸二社が、ともに首都圏の中央市場卸として進出することで大きな注目を集めた。

そして19年(平成31年)4月1日に地方市場に転換していた船橋市場の「長印船橋青果」(和田孝久社長)を存続会社として民営市場に転換した市川市場の「長印市川青果」を吸収統合した。

この統合が注目されているのは、船橋を営業拠点、市川を配送拠点と機能の棲み分けを明確にしたことである。

一つの卸売会社が二市場を機能別に整備して運営する方式は横浜丸中青果等でもすでに取り組まれている。

この二市場を連携することで、船橋60万人と市川40万人、東京に隣接し、千葉県下で最も所得階層が高い地域に100万人の商圏を有し、3月期で二市場合わせると240億円。19年度は250億円達成がほぼ確実だけに、長野市場を実質上回る規模となる。

東京の北の玄関口に位置する板橋市場と、千葉県船橋市場に拠点をおくことで、R&Cは完全に首都圏の卸としての役割を果たしていくことになり、規模的にも東京青果、多摩青果とともにビック3を形成する。

市場法改正によってその存在感を一層増すことは確実だろう。

4.R&Cへの期待

R&Cは、レンゴー青果と長印が合併ではなくホールディングス方式で市場流通の再編に取り組むケースであり、これは横浜丸中青果のホールディングス等のグループ内再編と違い、二社の独自性を活かしながら相乗効果を目指す初のトライアルとなる。

長野県の卸売市場は、仲卸制度がなく山間部が多い立地に対応するため必要なフルラインの品揃えと配送、加工・パッケージ機能の強化を図ってきた。

このため財務面でもコストはかかるが、その分のサービス機能を高めることで全国平均より常に高い粗利率を確保してきた。

高収益を維持できている要因は他にも、①売上高割、面積割の使用料負担がないこと、②代払い制をとっていないので奨励金の支出が少ないこと、③長野県産を中心に生産者を大事にする産地市場機能等である。

これらの特徴は改正市場法が目指している手数料業者から差益業者への転換を図るための有力なテストケースとしての意義もある。

これまでは連合青果、長印独自の取り組みが相乗効果をあげてきたが、今後は営業統合、システム統合など、選択と集中によるR&C機能の強化が二社の発展を左右するキーワードとなるだろう。

(農林リサーチ5月号より)