卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

丸果秋田県青果、復調から飛躍に向けて-県外販売開拓に活路

 

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約14万㎡ある秋田市公設地方卸売市場

秋田市公設地方卸売市場の「丸果秋田県青果(株)(高橋良治社長)」が好調だ。

2018(平成30)年3月決算で東北市場青果卸10社平均が前年比93%となり全社が前年を下回る中で、丸果秋田は99.6%とほぼ前年取扱高をキープし率でトップとなった。加工センター関連で被った損失もグループ全体でカバーし回復、健全化から活性化の軌道に乗り始めた。

平成29年度売上は64億8千万円、さらに平成30年4月からも前年比クリアを続け、8月117.2%、9月100.5%、10月138.0%となっている。

この躍進を支えているのが平成26年から取り組んでいる県内産野菜販売の全国展開を目指す新たな取り組みと、生産者との連携による県内産魚菜の食文化に関する情報発信である。

以下、いくつかの特徴的な取り組みを見ていく。

販売拡大へ新たな取り組み

1.潟上加工センターの活用

経営を自社化することで本格的な活用を推進、トップバリュ等へのグルテンフリー商品用の材料としてカット野菜を中心に販売し、完全黒字化を達成した。

また、関連会社である丸果運輸は3,600万円の経常利益を、秋田青果は900万円の経常利益をともに計上しており、グループ全体の収益性向上に貢献している。

2.「一徹豆」ブランド拡大

県外への販売拡大に貢献しているのが濃厚な味で好評な枝豆のブランド商品「一徹豆」である。枝豆の生産は7月〜11月で、いろんな品種をリレー化して「一徹豆」としてブランド化を実現した。

生産者の協力で産地をリレー出荷し原料の安定確保を図るとともに、 コープ神戸全店での販売を始め、これをきっかけに関東、東北各地でもオファーが相次ぎ、他の商品と相乗効果で売上を伸ばしている。

3.農業総合研究所との提携

県外への販売拡大や商品開発等様々な分野で農業総合研究所との提携を拡大、農業業の新分野への積極的な取り組みを推進している。

4.朝採野菜運動 

朝採野菜午後販売は平成13年から始まり、毎年5月から11月上旬まで、地場産野菜の生産振興の一環として取り組んでいる。
秋田県は高齢化、人口減少が進んでいるが、32万人の人口は東北4位、市場商圏は東北第2位である。
土地に恵まれ飢饉の経験がなかった土地として知られるが、一方ではそうした米主体の農業が続いており、野菜、果実の生産振興は遅れていた。
このため、丸果秋田県青果は昭和50年の創業以来、地場産の野菜・果物の生産振興にこだわり、通常取引に加えて、平成13年5月から県産青果物の今朝採り午後販売を開始している。

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朝採れ午後販売

情報受発信機能をフルに発揮

1.アグリビジネス研究会

多くの市場で市場開放や料理教室が行われている。

丸果秋田県青果は学識経験者や生産者で組織されているアグリビジネス研究会に5年前から参加し、月1回の試食会を続けており、最近ではホウキグサの実を使った丼など郷土食の普及に取り組んできた。

2年前に高橋社長が秋田市場の指定管理会社「あきた市場マネジメント(株)」の代表に就任し、市場全体の取り組みが増えるとともに、ネット上で詳しく情報を発信し、月1回、第3土曜日に開催されている市場開放デートの相乗効果で市民の好評を得ている。

2.あきた地魚クラブ

毎月1回秋田県で獲れる旬の魚の生態や特徴、美味しい調理方法を学ぶ講習会。

第2回目は旬の「ハタハタ」をテーマに開催。はじめにハタハタのオスとメスの違い、うろこやうき袋がないことなどの特徴やハタハタの開き方などの実演を受けて、「ハタハタの南蛮漬け」や「しょっつる鍋」「ハタハタの塩焼き」「ハタハタの煮つけ」を料理し試食している。

3.学食楽講座

この講座は県内産食材の魅力を紹介し、理解を深める企画。

毎回テーマとなる食材について専門家や管理栄養士から話を聞き、講義と健康レシピを一緒に学ぶ。

4.「旬の果物・野菜クラブ」

「旬の果物・野菜クラブ」は消費者に県内産の旬の青果物をPRし、理解を深めてもらおうと企画された試食会。
第6回目は「りんご」をテーマに開催。

5.市場開放デー

毎月1回、第3土曜日に午前9時から12時まで行われ、定着している。

統合と市場の方向性

2017年6月、秋田市場の青果卸2社が2019年春に統合する方針が出されたが、その後の卸2社の統合に向けた具体化が進んでおらず、なお紆余曲折も予想される。

札幌、八戸、長野、名古屋と大型集散市場での卸統合が相次いでいる。

これらの動きは、従来の市場流通が、中央市場は規模、地方市場は機能中心と、ある程度の棲み分けがなされていた状況が変わり、卸売市場改正によって同じ土俵で競合する可能性が強くなったことへの対応である。

確かに卸統合は、市場生き残りに向けた一つの選択肢であることは確かだが、各卸の独自性をどう共同し、市場機能の強化に結びつけるかがポイントであり、統合が先にあるわけではない。

秋田市場は丸果秋田県青果と秋印秋田中央青果の卸2社、および東北全域の集散機能を有する大型仲卸「松紀」の3社が秋田市場の青果流通を支える核である。

市場法の改正を受けて秋田市場はどのような方向を目指すのか、改めて協議し方向性を模索することが迫られている。