卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

春秋の争い

私は柔軟性がある(おおざっぱな)性格ですから、夏の間は暑いから冬がいいと思い、冬になるとやはり夏がいい、夏は貧乏人の味方だと毎年思っていましたが、近年の猛暑と冬の大雪は、どちらが好きかというレベルを超えています。

春と秋は素直に、秋になれば秋がいいと思い、春になれば春がいいと思います。そこが清少納言や紫式部の春秋の争いにならない知的レベルの違いです。

今は秋だから秋が好きです。

私は西の育ちですが、やや寒い空気の中を差し込む春の光の暖かさは格別ですし、暑さが和らぎ紅葉を揺らす涼やかな風と空気に差し込む秋の光も格別です。四季の移りは他に代えることが出来ない自然の喜びです。

秋に行くなら北海道です。札幌に行くときは北大植物園と夭折の画家三岸好太郎美術館、日帰り温泉が三点セットになっています。三岸好太郎は31歳で亡くなった昭和初期を代表する天才洋画家です。

「早く亡くなってくれたので夫の才能と女遊びの後始末に押しつぶされないで絵を描き続けることができた」と書かれている長命だった同じ洋画家の夫人、三岸節子は夫より有名でしょう。ふるさと愛知県一宮市に感じのいい美術館があります。タイトルは忘れましたが、暗闇に咲く桜の大木の大作や静物など、晩年のすさまじい迫力は紛れもない天才を感じます。

どちらもお気に入りですが、孝太郎美術館に尽力した節子がなぜ別々にしたのか、見に来る人の都合を考えて欲しいと思いますが、三岸節子がそんなことを考えるわけがありませんね。

札幌のホテルで孝太郎美術館の方向を聞くと、あんな遠くまで歩いて行くのかと驚かれ、タクシーがいいと勧められましたが、15分か20分で行きますので大通公園をゆっくり歩いて秋の札幌を楽しみました。北海道の人は歩かないし暖かい所ばかり居るので寒さに弱いと聞きましたが、どうやら偏見ではないと思いました。

せっかくの秋、食べ物に造詣が深い平野雅章氏の「食物諺集」から秋の諺を拾ってみました。

  • 秋カマス嫁に食わすな
  • 秋サバ嫁に食わすな
  • 秋フキ嫁に食わすな
  • 秋ナス嫁に食わすな
  • サンマが出るとあんまが引っ込む
  • ミカンが黄色くなると医者が青くなる
  • ユズが黄色くなると医者が青くなる
  • ダイダイが紅くなれば医者が青くなる

「嫁に食わすな」は、嫁いびりの説と、嫁の身体をいたわる説の両方があるそうです。
単純に嫁いびりだとも思えませんが、サバでしたら鮮度保持技術も弱かったでしょうから食中 毒を心配するということも考えられますが、カマス、サバ、フキ、ナスと並ぶと、嫁の身体を いたわるだけとも思えません。どうなのでしょうか。

サンマ以下は、旬の青魚や果物が健康にいいことを語呂合わせした言葉遊でしょうが、青魚や果実など健康にいい旬の効用は広く知られていたということもあるのでしょう。

秋の旬の食べ物は この他にもたくさんありますし、柑橘類が健康にいいことは当時から知られていたということでしょうか。

果物の色はいろいろですが、医者は全て青くなるのもおかしいですね。青は不健康な象徴なのでしょうか、海の色や空の色、緑まで含めた「蒼」色は最も好きな色です。