卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

市場法改正をめぐる課題

市場法改正をめぐる状況が徐々に明らかになっています。

スケジュール

卸売市場法改正と食品流通構造改善促進法改正は、「及び法」として二本の法改正をセットで上程します。6月まで開かれている通常国会に向けてのスケジュールは今のところ次のような予定です。

 2月 自公の与党審議

 3月 内閣審議・承認

 4月〜6月 国会審議・承認

農水省関連の提出案件は9件で、市場法改正は7番目か8番目に予定されていますので、衆議院で5月、参議院で6月に入って承認される予定です。

承認された二本のうち、食品流通構造改善促進法(食流法)は「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律」(仮称)に改正され即日施行されますが、卸売市場法は2年間の猶予期間を間に入れますので、施行日は平成32年6月(実質は年度替わりの4月)になる予定です。

この平成32年6月に向けての準備を逆算していきますと。卸売市場法に定められていた施設整備への支援や取引適正化の調査など、かなりの部分が食流法に規定されることになりますので、卸売市場法を補完する政令・省令が重要になり、一年前、平成31年の6月には出さなければなりません。

そしてその条令の策定、折衝等にかける時間を一年間とすると、平成30年の6月、つまり、日程的にはかなり急がれるスケジュールになっています。

改正でなく新法

今回は卸売市場法の改正というものの、これまで出された2回の卸売市場法改正とまったく違い、内容的には「改正」というレベルではなく「新法」であることは明らかです。

水省が出した改正法案の概要(別紙)でも明らかなように、卸売市場法は卸売市場法単独では機能せず、食流法が実際上の市場業務・運営の指針となっているからです。

いわば卸売市場法が基本理念を規定し、第10次で廃止されることが決まっている卸売市場整備基本方針・整備計画に代わる役割を食流法が担うことになるからです。

卸売市場の何がどう変わるか

それでは、市場法改正でも新法でもいいのですが、何がどう変わるのでしょうか。

改正の具体的な内容については、当然のことですが国会上程前に公表されることはありませんし、まして今回は細部で決まっていない部分があるようですから市場業界や全国の開設自治体で関心が高くなることは当然です。国の説明会だけでなく業界や研究者が開くセミナーも多くの人が集まっています。

そうした中で、現段階で明らかになっている質問と回答、もしくは見込みを含めていくつかのテーマ別に紹介します。

1.許可制と認定制の違い

許可制は国や行政自治体の関与の度合いが強く「行政主体」、認定制は民間の事業を行政が認める「民間主体」で、今回の卸売市場法改正での認定制の基本は「公正・透明を旨とする共通ルールを遵守し、公正・安定的に業務運営を行える、高い公共性を審査する」ことであると国は説明しています。

2.卸に対する国の指導

卸売市場に対する財務検査等は開設者が対象であって業者には行わない。食流法に基づき定期的な調査を行い不公正な取引等があれば公正取引委員会に通知する。

3.市場業者の扱い業種

基本的にはルール(公正・共通ルール)を守れば何を扱っても自由。例えば青果卸が水産や花をあつかってもいい。但し、共通ルール、食品衛生法の適用は受ける。

4.従来通りの規制条文

条例で従来と同じ規制条文を残した場合でも認定を受けることはできる、但し、関係業界の意見を聞き、不公正取引にならないような共通ルールが必要。

5.開設区域

開設区域は実際上ないが、法文上も削除すると開設自治体の議会で問題となるケースも考えられるので「開設区域」ではなく「主たる供給圏」といった表現に変えることが検討される。

6.売上高割使用料

商物分離取引など、市場施設を使わない取引が増えた場合に、新しく施設整備を行った後などで面積割使用料に一本化することも考えられる。

7.関連の空き小間

関連の空き小間対策として新しい事業を行うことは自由、小売等も可能、ただし施設償却が終わっていない場合は補助金の返還が必要。