卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

改正法の試金石となる東京市場

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東京都の条例改正案が2019年11月28日に開かれた取引業務運営協議会で答申され、11月5日の市場審議会の了承を経て12月都議会に上程される。

すでに京都市が上程されていて、今後、中央市場を開設する自治体で来年6月までの卸売市場申請に向けて条例策定が進むことになる。

京都市場が現行条例を若干変更しただけで取引の規制条文はそのまま残したのに対し、東京都は取引規制の条文を廃止し、卸、仲卸ともに施設契約にするという全面的な規制廃止に踏み切った。
一見、真逆のようだが実態はそれほど変わらず、今後は市場ごとの取引委員会での運用に委ねられることになる。

都の会議でも論議されたが、問題の核心は市場の取引原則である「公正・公開・効率」をいかに維持しつつ取引拡大を実現できるかである。

国は卸売市場法の規制条文をほぼ廃止し、公開を義務つけることで公共性の担保を図るが、運用については開設自治体の裁量に委ねたことで結果的に条例はバラバラになった。
国はこれこそ市場法の狙い通りだというだろうが、全国自治体での困惑は広がっている。


東京都の会議では卸の代表である伊藤裕康氏が「条例改正で社会インフラとしての役割強化を図り高い公共性を目指す」と述べ、仲卸代表の早山豊氏は「市場の活性化には取引量の拡大だけでなく地域社会の貢献などを活性化につながる取り組みが必要」と述べている。

視点が微妙に違っているが、社会インフラとしての公共性維持は共通している。

東京都は、卸売市場法を踏襲し規制条文を廃止し、毎月の取引方法ごとの取扱量・金額の公表義務化による「見える化」と、取引委員会の活用によって公共性と効率性の両立を図る。

この流れの先には、当然、市場の運営も業界に委ねる「民営化」も視野に入ってくるだろうが、この「民営化」は市場の土地・施設の譲渡ではなく「市場運営の民営化」である。

改正市場法後の焦点はこの「市場運営の民営化」になるだろう。


従来も公共性と効率性の両立は強調されていたが、規制条文廃止によって本当に公共性と効率性の両立を維持できるのか、東京都は卸売市場法の内容をそのまま条例におとしこんだ。
東京都11中央市場の取り組みは、改正市場法の評価と直結するだけに真価を問われる試金石となるだろう。