コロナの終息が期待できるか、不安ながらも夏がきた。
静岡新聞が2020年5月30日付けで「天然ウナギの生息する場所には他の生き物も多く存在し、ウナギは生物多様性の象徴になる可能性がある」と神戸大学等の研究チームが発表した論文を紹介している。
ウナギの季節を前に嬉しいニュースだ。興味深かったのでメモ代わりに紹介しておこう。
日本は山と川が豊富で、その結果として沿岸には豊かな漁場が広がっている。
気仙沼「水山養殖場」の畠山重篤氏は「森を育てることが牡蠣を育てる、牡蠣を食べることは森を食べること」のポリシーで数十年にわたって森に木を植える運動に取り組んできた。
若いころ築地市場の業界紙にいたこともあって畠山氏の取り組みは知っていたが、本当には理解していなかった。
世界で第6位の海岸線を持ち、経済水域が世界の共通認識になったことで日本の水産業は遠洋から沿岸・近海主体になった。
その中で、沿岸に養殖場が増え、漁協が経営体に変化していったのだが、沿岸漁業は海に支えられているだけでなく、山とそこから流れ込む川に支えられていることを、おそらく日本で初めて気がついたのは研究者ではなく畠山氏だろう。
畠山氏の知見を科学的に実証したのが今回のウナギ研究だろうと思う。
海と川を行き来する「通し回遊生物」が他の淡水魚等に優占する魚であることは知らなかった。
今まで「ウナギは産卵場もわからないのだから減るのは仕方がない」と思っていたが、我々が川を汚さなければウナギは増えて他の魚種や生物も増えるのだ(順番は逆で川の生物が増えるから、ウナギが増えるのだろう)。
川を汚さないことが自然を守り、生態系を守ることに繋がる。さらに川から海に流れ込む沿岸漁業の発展にもなる環境保護に直結した経済行為でもあるだろう。
淡水域は生物多様性に富んでいるが、人間の生活域と近いため劣化が著しく、淡水域に生息する種の三分の一がレッドリストにある絶滅危惧種として指定されている。
日本経済における第一次産業、漁業・農業の重要性は増えることはあっても減ることはない。
魚や植物、鳥と共存することが人間社会を守ることにもなるという程度の認識はあったが、環境保護と経済への貢献が両立するという意義を教えられたことは嬉しいことだ。
畠山氏ほどの行動はできないが、せめて川を汚さない、ゴミを減らす等の基本を守りたいと思う。