市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

R&Cホールディングス2千億円卸に〜R&Cながの青果 堀陽介社長に聞く

R&Cながの青果 堀陽介社長(HPより)

R&Cながの青果 堀陽介社長(HPより)

R&Cながの青果を中核とするR&Cホールディングス(堀雄一社長)は、今年10月に豊島青果の卸売部門分割会社の全株式を取得、今期売上は2千億円を越すことが確実となった。東京青果に次ぐ全国2位の青果卸となる。R&Cグループの長野県内7市場と首都圏5市場(高崎、板橋、豊島、船橋、市川)の役割と連携はどうなるのか、連合青果と長印が統合し4年目を迎えたR&Cながの青果の堀陽介 社長に聞いた。

(全青協2025年9月号より転載)

1.R&Cグループの3月期決算

― 7年間の準備期間を経て令和4年4月にR&Cながの青果が誕生し3期目を終えました。初めにR&Cながの青果の3月期決算の概要をお聞かせ下さい。

堀陽介社長= 当社(R&Cながの青果)としての令和6年度売上は、1115億98百万円(前期比108.9%)、経常利益20億83百万円(同100.6%)、当期純利益14億52百万円(同154.3%)となりました。 合併3年後の目標だった売上1000億円は2年続けての前倒し達成を実現できました。幸い、単価高等の環境もあり好決算となりましたが、4期目を迎え、天候不順やいわゆる24年問題による人手不足、物流効率化法改正への対応など課題は山積しています。

2.R&Cグループ売上は1750億円

― 6月9日に長年の課題であった豊島青果の吸収統合が発表され、R&Cグループは今期、2100億円を超すことが確実になっています。R&Cながの青果とは別ですが、グループ全体の売上等を簡単に教えてください。

堀陽介社長= R&Cグループの第10期取扱高は以下のとおりです。青果卸売事業がほとんどを占めていますが、この中には、R&Cながの青果の他に東京富士青果、ぐんま県央青果、長印船橋青果が入っています。高崎、板橋、船橋の3社が好調だったこともあり、グループ全体の当期利益も前期比144.5%の大幅増となりました。

売上 百万円前期比 %
青果卸売事業167,110109.7
加工事業2,203108.1
運送事業2,29198.2
その他事業3,550110.7
合計175,155109.5

3.長野青果とグループ各社の役割・連携

― R&Cグループは長野県内7市場(6支社・1子会社)と県外4市場に展開されています。長野県内7市場はR&Cながの青果の本支社となるのでしょうか?

堀陽介社長= R&Cながの青果は長野、上田を本社に、松本、佐久、須坂、中野の4市場を支社にしています。1100億円の売り上げのうち、長野が基幹的な本社機能を担っており4割弱を占めています。上田は長野とは違う商社機能を担い、松本は広域商圏に対応できる整備をしており、佐久と須坂の2市場は産地市場モデルとして産地と連携した市場機能を構築しています。また諏訪はグループ会社が任意市場として運営しています。

4.拠点の特性活かした地域戦略

― これだけ市場展開されていると、相乗効果を出すのも大変かと思いますが。

堀陽介社長= 相乗効果ありきでは考えていません。それぞれの地域で存在価値を発揮することを大事にし、統一したシステム・経営方針を持ちながらも、地域ごとの独立性を維持する方針です。各支社にそれぞれ拠点責任者を置き、独立採算制に近い形で経営に責任を持つ体制になっています。地域ごとに商品構成や販路、得意先が異なるため、拠点の特性と地域戦略を基本に、それに合った市場ごとのビジネスモデル確立を目指しています。

5.R&Cグループの首都圏戦略

― 長野県内がR&Cながの青果として一本化され、県外も高崎、板橋、豊島、船橋、市川、と首都圏に向けた進出が相次いでおりR&Cホールディングスとしては長野県外の比重が高くなります。

堀陽介社長= 長野県の人口はついに200万人を切りましたし、R&Cながの青果の売上も県外販売比率が過半数になっています。日本の消費人口減少によりマーケットが縮小するのですから、県外販売の拡大は企業の存続だけでなく県内農業振興のためにも必須条件です。高崎、板橋、船橋は好調ですし、豊島青果がグループに入ります。それぞれの市場で独自の強みを活かしたビジネスモデルを確立し、安定的かつ健全経営をしていくことが命題です。

6.システム改革とDXの推進

― 全国的にDX改革が重要な課題になっています。R&Cは青果卸の中でもトップクラスの運送企業「R&C物流」がグループ企業ですし、基幹システムも現在整備されています。まず物流の24年問題への対応はいかがでしょうか。

堀陽介社長= R&Cグループは長野県内7市場と群馬、東京、千葉に5市場ありますのでDX改革は中心的な課題です。「R&C物流」は市場流通を支える役割を果たしてきましたが、物流大綱、24年問題への対応等で一層重要になっています。ドライバー不足に対応するために有料道路使用増加や人件費、物流施設整備など、この一年で数千万円を投資しました。

7.基幹システムの改革

― 基幹システムの構築は大変苦労されていると聞いていますが。

堀陽介社長= R&Cながの青果は3年前に連合と長印が統合しましたが基幹システムはそのままでしたので長年の老朽化・保守性の課題がありました。これを解消するために連合と長印のシステムを統合した新システムへの全面的な移行を現在取り組んでいます。

新システムは「経営判断に必要な情報がきちんと可視化できる管理会計ツールとしてのシステム」にすることを重視しています。外部システムとのデータ連携も想定しており、分荷指示業務のシステム化による業務フローの効率化や省力化も着手して参ります。

8.人財育成と組織文化

― 人財育成はどの卸も重要課題です。どのようにされているのでしょうか。

堀陽介社長= 営業人財の採用・確保・育成が次世代では最重要課題になると考え、成果主義の在り方と共に人事評価制度を見直すプロジェクトを社内で推進しました。現場の代表者の声を集めて策定した新制度とその運用をベースに、若手社員の採用・育成、定期的な社内研修や外部研修の導入などを展開しています。時代変化の感覚と企業文化とが融合した新しい組織風土が出来上がることを期待しています。

9.全社視座を身に付けよう

― ありがとうございました。最後になりましたが、新社長としての今後の抱負をお願いします。

堀陽介社長= 本年度の取組テーマは「人づくり」です。
具体的な取り組みテーマとして①PDCAサイクルを廻そう、②協業スキルを磨こう、③営業マンの在り方に向き合おう、④「全社視座」を身に付けよう、の4点をあげています。

目的は生産と消費を結ぶ“いいもの”の流通に関わる人財の育成です。
市場流通は今年、改正市場法5年目の見直しになりますが、自治体ごとに市場のあり方を決める考え方は評価できると思います。青果市場の統廃合はさらに進まざるを得ないでしょう。

今後、気をつけていきたいのは合併によって支社単独でビジネスモデルを確立出来る力が増した分、全社視座が持ちづらくなってきています。市場統合は1+1=2にならない世界です。良きライバルでありながら互いの持ち味を共有し磨く意識を高めて支社の壁を超える仕組みを研究していく方針です。

R&Cが日本の青果物流通の中で重要な役割を果たす存在になることができるように頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。

取材を終えて

5年前の改正市場法の“恩恵”を最も受けたのはR&C、熊本大同青果、神明グループが筆頭だろう。中央市場と地方市場の垣根がほぼなくなり卸の経営力の勝負になった中で3社とも流通業としての新しいステージを構築した。

今回、取材に訪れたR&Cながの青果は、かつて中央市場構想で計画され、途中、扱い業種の問題等で業界の要請を受け地方市場に変更された経緯がある。もともと長野県は山等で経済圏が分かれ各地の狭い商圏に小さな卸問屋による地域市場があった。他県からも大手が入り込むこともなかった。地産地消である。その後、交通網とトラック輸送の発展により地域市場の統合が進んだ。R&Cの前身が「長野県連合青果」であった所以である。

長野県連合青果と長印が統合した際は、こうした長野県内市場再編の集大成ということもあり、公正取引委員会による独禁法規制は5年間続いた。平成27年(2015)4月に長野市内のホテルで連合、長印HDの2社による共同持株会社設立が発表され、大型市場の単数化の全国的な流れを決定的なものにした。堀雄一社長と倉﨑利雄CEO(現:倉﨑浩会長の父)のトップ合意による電撃的発表であった。

私も会場で発表を聞いたがワンマン経営者の評判が高い個性の強い両氏がよく合意できたと不思議に思ったことを記憶している。特に長印は、株の構成等から連合主体の卸になることは予想されており長印社内の合意形成は難しいことは明らかだった。倉﨑利雄CEOでなければ統合は難しかったと思う。

いまは亡き倉﨑CEOに当時、そうした事情を聞いたが「長印経営のことより社員の将来を考えれば連合主体になってもやむをえない。決断するなら今しか無いと思った」と話されていた。そして予想通り、令和4年(2022)に長野県連合青果を存続会社、長印を消滅会社とする吸収合併方式によって「株式会社R&Cながの青果」が誕生、初代社長に長印の倉﨑浩氏が就任、合併3年後の目標だった売上1000億円を前倒し達成させた。堀雄一、倉﨑利雄、両氏の思いが見事に継承された証だろう。

今回お会いした倉﨑浩会長は2年間を振り返り次のように話してくれた。
「この2年は統合、価値観を揃えることに努力しました。合併の1年前に等級・役職等の人事制度を両社揃えたことでスムーズに移行することができました。統合優先になってはいけないとの思いもあり、一対一で対話を増やし、人事評価は3回やって調整してきました。社員から何を求められているのかわからない状態では進められません。こういう人材を求めているというメッセージを出し、価値観を共有することが大事だと思います。社員の生活に直結し、左右します。この価値観の共有が一丁目一地番地だと思います。」

R&Cグループも豊島青果統合によって再編の動きはピークの踊り場になるだろう。
堀陽介社長は42歳。東京青果の川田光太社長、東果大阪の矢野裕二郎社長など同世代のリーダーによって青果市場流通はどう変わるか。グループ12市場は堀社長も言う通り、県外市場の伸びがR&Cグループの今後を左右するだろう。将来的には県外市場売上が県内を上回る可能性は十分にあるが、その前提は長野県内7市場の安定的な運営である。国内農業の活性化は国全体の課題であり長野県は野菜、果実ともに産出額900億円の大産地である。

「広域流通」と「多拠点連携」をキーワードに「R&Cグループが、日本の青果物流通の中で重要な役割を果たす存在になりたい。」(堀社長)が現実的な課題になりつつある。

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