2018年7月29日付け、指定管理者「大阪府中央卸売市場管理センター(株)の1億円の利益確保」に続く市場活性化事業の取り組みである。
こうした収入増と支出減の取り組み、市場活性化への多彩な取り組みはなぜ実現出来たのだろうか。
第一にあげなければならない要因は、管理センターが経営体としての独自性が確保されていることである。
管理センターの経営体制は、代表取締役は山口秀雄・大阪府水産物卸協同組合相談役で以下、取締役5、監査役1、社員6(正社員5,嘱託1)である。
代表取締役に29年度から若干の報酬が支給するようになった他は無給。
定例課長会議や常駐代表者会議などで市場関係者との情報共有を図るほか、日常的なスピード感、効率的・効果的な市場管理運営を担うのが6名の事務局。行政担当時代に比べると三分の一になり、責任者以外は担当を固定せず、全員がオールラウンドプレーヤーをめざす。
中心となる経営のプロがいて初めて機能する制度だが、こうした独自の動きを保証しているトップのリーダーシップと役員等の合意が前提である。
一般論としてはそれほど困難ではないように思えるが、指定管理者を導入した多くの公設市場では、使用料の徴収代行機関としての実務機関に徹するか、職員数を減らすことによって生じた人件費の削減分を面積割使用料の減免の原資にするケースが多く、これも市場業者に対する経営支援として市場活性化に貢献するとも言えるのだが、市場の管理運営、活性化に責任を持つ市場経営体としては不十分だと言わざるを得ないだろう。
第二の要因は卸、仲卸等の市場業者に力があること。
大阪府市場の卸は、青果、水産ともに各2社で、全社が大阪市中央卸売市場(大阪本場)のグループ会社である。
取扱高も4社合計の市場取扱高は1千億円前後で安定しており、仲卸と共に関西圏を代表する大型広域拠点市場として機能している。
こうした業界の力の安定を背景に管理センターの経営体としては安定しているのだが、意思決定の機関としては本社社長をメンバーとするとスピード感、効率性が望めないため、仲卸組合理事長が代表者に就任し実質的な意思決定機関は常駐代表者会議が担う。
卸の協調・協力無しには機能しない体制であり、こうした面でも市場の一体感が指定管理者の成功を左右する重要な要素であることを示している。
さらに、これも重要な点だが、大阪府と市場業界の信頼関係が確立していることで、先に紹介した様々な活性化事業は、行政と業界の共同事業として取り組まれている。
特に、他市場に見られない特徴的な取り組みが、指定管理者としての修繕事業の他に、大阪府の責任となる施設改修事業を管理センターが受託し、工期・価格・品質において民間の優位性を活かした地方自治法に基づく「大阪府依頼事業」として覚え書きを結び、大阪府の予算で29年度は3件、6,320万円の事業を実施した。
改正卸売市場法下で、管理センターは大きな役割を果たすことになるだろう。
改正市場法は「全体を見れば国の関与が弱まった中で、必要な物が少し入っているというのが、この(法案の)構造だ。」(斉藤農相の国会答弁)である。
改正卸売市場法が求める課題は、最大限の効率性と最低限の公共性の両立を図ることだが、効率性・市場の健全経営に重点があることは明らかである。
そして健全経営の基本は収入増と支出減である。
今まで紹介した管理センターの取り組みは、収入増もコスト減も、それほど起死回生の策というほどではない。
誰もが思いつくことを一つ一つ丁寧に実行してきただけとも言える。
それでも中央市場ではどこもチャレンジできず、導入した市場はない。
近い将来、市場会計の健全性は、一般会計操出等の支援なしに健全経営できる開設者を目指さなければならなくなるだろう。
指定管理者制度を導入している市場は約30市場あるが、管理でなく市場運営機関として機能している管理センターの取組は、改正市場法後の市場開設者のあり方を検討する大きな事例となるだろう。