「改正市場法時代をどう生き抜くか」をテーマに行われた、全国青果卸売市場協会と全国魚卸売市場連合会の合同研修会における櫻田光雄 沼津中央青果社長の講演を紹介する。
近年、市場業界育ちではなく金融機関やスーパー、食品企業を経て卸売会社社長に就任するケースが増えている。櫻田氏は東大卒、建設省(国交省)課長から沼津市長を経て沼津中央青果社長となった。
卸売市場の経験がないと卸売会社経営は難しいという考え方がある一方、市場の外から見た経営視点が卸の経営改善には有利という意見もある。もちろん、どちらがいいということはない。どちらからも学ぶべき点は多くあるだろう。しかし、櫻田氏のような経歴を持つ経営者の「市場経営論」を聞く機会はあまりないだろうと思う。
沼津市長から卸売市場の経営に転じ12年、櫻田氏の卸売市場に対する問題意識と取組みは、おそらく改正市場法新時代を生き抜くための多くのヒントを与えてくれるだろう。
以下、櫻田氏の講演概要を紹介する。
「市場の生き残りをかけて」というテーマですが、市場全体ではなく沼津中央青果としての取り組みをお話しします。私は平成19年にこの業界に入りましたが、会社の売り上げは年間100億円足らずで不動産業務もやっていますが、この一年間でプラスになったのは2月だけでした。取り組みが正しいか間違っているか、生き残りとは逆のことをやっているかもしれませんが、包み隠さずお話しします。
改正市場法のことはあまり心配していません。法律が経済を変えることはありません。経済が法を変えることもありません。実態が変化したから変わるのであり、法を恐れるのでなく経済社会の変化を恐れるべきです。
例外は税法です。税は経済を変えます。消費税の10%と軽減税率8%の導入によって変わらざるを得ません。受託手数料中心の経営健全化は難しくなる。受託でなく買付け主体に経営は大きく変わるだろう。沼津中央青果は仲卸がありませんので仲卸業務もやっていますが、例えば個別配送とセンターフィー、リベートの問題でインボイスが出せないと商行為でなく贈与になってしまう。贈与でなく商行為の一環であり経費であると、今の取引のままでは言えなくなるでしょう。変えざるを得ません。
情報社会と言われていますが、情報が大事ではなく解析・インテリジェンスを誤ると打つ手が悪手になる。市場流通の取扱高はこの10年で4.5兆円から3兆円に減っていますが、人口減や高齢化が進んでいるのだから仕方ないと思っていると会社は潰れてしまいます。それでは事態の深刻さが理解できません。
高齢化したから食べなくなったのではありません。トマトやレタスなど年齢が高くなると増えています。食生活の変化にどう対応すべきか。
中食は今後も増えるでしょうが、大規模加工業者は産地からの直接仕入れが増えていて、これに市場がどう対応するか。輸入も増えるでしょうが国内産地と連携し生産と消費をつなぐ場として生産、販売に取り組み沼津中央青果のブランドを目指す。産直は限定的な流通です。時間を買う消費者が増えている社会にどう対応するか。原料の重要性は減りません、悲観することはないと思っています。
次に沼津中央青果としてどのような取り組みをやっているか、「市場の常識を疑う」とは何かについて箇条的に述べます。
(全青協2020年1月号より一部転載)