食料安全保障と食料自給率について検討してきたが、国が目指す食料安保政策と密接な関係にあるのが市場主義経済の推進と、これに伴う規制緩和の政策、種子法廃止や種苗法改正案、さらにJ A全農改革や卸売市場法・漁業法の改正など全てこの規制緩和路線を目指す政策である。最後に、こうした歴史的な経緯を振り返りまとめとする。
大正12年に制定された中央卸売市場法によって、卸売市場は行政関与の下に発展してきた。生鮮食料品の流通については四日市、五日市、八日市などの地名が今も残っているように、市民生活を支えてきた制度である。
日本で最も早く開設された京都市中央卸売市場の再整備にあたって、義務つけられている発掘調査で同じ場所に我が国最古の市場である平安時代の東西市が存在したことが証明されたが、明らかになっているだけで千年以上の歴史を有している。
古くから個人・民間に委ねられてきた食品流通に対し、時の権力が食料安全保障政策として介入してきた。織田信長の楽市楽座や江戸時代の魚市場、米屋等の問屋株制度で一大隆盛期を迎えたように、流通における民間事業と行政との関わりは古くから続き、そのなかでサプライチェーンマネジメント(SCM)が形成されてきた。
市場経済をどのように管理・発展させていくかは「神の見えざる手」に任せるべきだとするアダムスミスの古典的市場主義からの長い歴史がある。その世界的な流れを簡単に箇条書きで並べてみる。
1981年 レーガン政権発足 英国から米国へ 市場主義経済による米国主導型グローバリズム
1988年 父ブッシュ(J・ブッシュ)政権
1992年 クリントン政権
2001年 子ブッシュ政権
2009年 オバマ政権
2017年 トランプ政権
日本 1987年~1990年バブル経済期
1991年3月から始まった平成不況
1993年細川連立政権 38年間続いた自民党1党支配の終焉。8カ月で退陣
羽田政権も2か月。村山~橋本~小渕~森 2000年政界再編成へ
1994年(平成6年)細川連立政権「経済改革研究会報告書」(平岩レポート)
「経済的規制は原則自由に、社会的規制は自己責任を原則に最小限に」
(具体的課題)(基本的な狙いは市場原理・競争原理の回復)
平岩レポートの背景
1989年、平成元年から始まった日米構造協議に基づき、日本国内において政府主導で積極的な規制改革の動きが強まった。その推進母体となったのが1996年に設立されたオリックス会長の宮内義彦を委員長とする「規制緩和委員会」である。
これ以降、規制改革会議や規制改革推進会議などいくつも名称を変えながら規制緩和政策が一貫して取り組まれてきた。その中心は2001年に発足した小泉内閣が2002年に設立した小泉・竹中両氏を中心とした「総合規制改革会議」から2016年9月に第三次安倍内閣によって設立された「規制改革推進会議」である。
郵政民営化をはじめ観光立国政策や全農改革、働き方改革など現代社会を形作っている経済構造の土台を構築してきた政策の推進役が小泉純一郎・進次郎、安倍晋三、竹中平蔵、大田弘子、金丸恭文等の各氏である。