松本のことは前に書いたが、九州人の私にとって北海道は憧れの地であり、とりわけ函館は好きである。
長崎育ちなので函館は港や路面電車、函館山からの眺望など共通点が多く親近感があり、昔から何度も行っている。
森田芳光メモリースペースのある喫茶店「ヤマ上」
谷地頭温泉に行き、帰りに函館山の途中、元町の鄙びたカフェやまじょう(ヤマ上、仲卸の屋号と同じ)に入った。
映画監督森田芳光メモリースペースがあり、地域文化の拠点となっている有名人のマスターと話していると、講談師「荒到夢形(こうとうむけい)」氏がお客として来た。
免許証のような「名刺」をもらい高校教員を経て講談師となったことなど伺っていると、ピアノ調律師の方がふらりと入ってきた。
ショパンコンクールの話や絶対音感がなくとも調律師はできるなどの話を伺った。端のスペースでは撮影機材を片付けている人もいて、各自勝手、何やら高校の文化サークル部室のような雑然さで極めて居心地が良かった。
函館朝市の人出は復調しただろうか
函館朝市はJR函館駅に隣接していて数百軒の店が並んでいるが、私が行った時は閑散としていた。地元客が行く「函館自由市場」も前より人出は少なかった。
今はかなり回復しているだろうと思う。
客が少ない通路を通ると声かけが多くなり、スーパーと違い見て歩き品定めはしにくい。
朝市には飲食店もあるが、多くは海産物を売っている店舗の二階に食堂がある。店舗の中に入らないと二階に行くことができず、また看板はあるが中の様子は分からないため、私のような食事だけの客は入りにくい。
今、各地の卸売市場で「賑わいエリア」がつくられているが、販売店と飲食店の配置が難しい。八戸の「八食センター」は1階に売り場と食堂を混在させていてコロナ禍でも地元客の姿が目立つ。
そろそろ観光客も増え始めているが、こうした観光市場もコロナ後にどうなるか、昔通りの復活ではなく新たなスタイルが求められてくるかもしれない。
登別温泉の思い出
函館には観光客が多い湯の川温泉と、地元客が多い谷地頭(やちがしら)温泉がある。
両方とも路面電車で「湯の川温泉行き」と「谷地頭温泉行き」があり交通の便は良いのだが、やはり谷地頭温泉の方が評判は良いようだ。
どちらも行ったが、谷地頭温泉は休憩所があり食事もできるので、やはり気楽である。
函館ではないが登別温泉には思い出がある。
仕事で札幌に行き、帰りは函館から帰ったのだが、途中、登別温泉に行き、ホテルの日帰り温泉に入った。
冬場の平日、午後で人も少なく、大浴場に入ると、男風呂の中の上がり口に防寒服を着た若い女性が立っている。何やら怒っていて私の顔を見るなり中国語と英語のチャンポンで、早口に話しかけてきた。
一瞬、入口を間違えたかと緊張した。英語も中国語も分からないが、どうやらボーイフレンドがコーヒーか何か買ってくると入ったきり出てこない、呼んで来て欲しいと言うことらしい。万国共通語のOK,OKと気安く受けて中に入ったが脱衣所にはおらず自動販売機もない。
彼女に中にいなかったというと、いきなり怒り出し、居ない筈はない、この靴は彼のものだと言う。
語学力のなさもあって本当のところは分からないが、彼女を男風呂入口に立たせたまま入浴しているだろうかと思ったが仕方ない。彼氏の名前を聞き、服を脱いで大浴場に入った。
高齢者は多いが若い男性は数人しか居ない。目星をつけて「ミスターA?」と聞くと「アンタ誰?」と言う顔で「イエス」と言う。
私が「彼女が外で怒って待っているぞ、早く出ろ」と頭から親指を突き出して言うと、ニッコリ笑って「アイシー、アイシー、サンキュー」と急ぐ気配はさらさらなく、悠然と出ていった。いかにも育ちの良さ丸出しで、二人とも中国の富裕層だろう。
あの二人の将来はどうなる?と想像しながら入ったので温泉についての記憶は全くない。