卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

公設市場再編が焦点

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改正市場法による卸売市場の認定数は中央市場が40都市、65市場であり、地方市場は911市場(公設143、第3セクター31、民設737)となっている。
これに対し許認可制時代の令和元年度市場データ集の市場数(平成30年度)は、中央市場が40都市、64市場で、地方市場は1025市場(公設149、第3セクター33、民設843)であった。

100近くの民設地方市場が減少しているが、中央市場、地方公設・準公設市場は減少していない。
なぜ公設市場は減少していないのだろうか。

もちろん「市場流通の低迷」は民設民営市場だけの問題ではない。
考えられることは民間企業の事業として卸売市場事業から撤退する経営判断を行なったケースが多いのに対し、公設市場は業界の経営が不振であってもPFI等によって何とか開設を維持しようとする姿勢であること、また卸売市場の認定に必要な業務規程などの手続きは苦ではないこと等が減少していない理由だろう。

そうした意味で今後、市場流通は公設地方卸売市場の再編が大きなポイントとなるだろう。
公設地方卸売市場は、歴史的には国・地方自治体の市場取引への管理監督を強めるために民営市場の公設化を進めてきた結果である。

公設化を進めるために、民営市場の用地・施設を自治体が借り入れ「公設市場」としたケースまで生まれた。
また逆に民営化が推進されるようになると、公設市場の土地・施設を市場業者に無償で使用させることで「民営化」したケースなど、市場流通は国の政策変動の渦に巻き込まれながら、メリット・デメリットの双方に大きく触れ続けてきたのである。
その流れの中で現在、市場整備のキーワードとなるのが民間活力、いわゆるPFIである。

次回、新しい市場整備の方式として前回紹介した「市が所有する市場敷地全体に事業用借地権を設定し、事業者が市場施設と民間収益施設を一体的に整備した上で引き続き所有し、市場施設を市が賃借し運営を行う」富山市場方式について検証する。