卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

「成田市場だより」発行

成田市は2021年3月26日付けで、「成田市場だより」を発行した。

来年1月開業を予定している成田新市場について、年度末である3月末段階での開設準備の状況について詳しく情報開示している。
その内容についてはすでに紹介した部分も多いが、開設自治体としてこうした情報発信を行う意義は大きい。
今後、2ヶ月に一度発行される予定である。

数回にわたる工事延期やコロナ禍によって、成田新市場の開場当初の計画とは若干違ってきており、訪日観光客の受け皿となる「交流・集客施設」が全く手付かずのまま「高度物流棟」及び「公設卸売市場棟(青果・水産)が先行開場することになった。

成田新市場はさまざまな面で市場内外から注目が集まっている。その理由は次の点にある。

  • 形の上では「成田市公設地方卸売市場」の移転だが、実質は国の主導による新設の「輸出機能」に特化した国策市場であること
  • 主要な狙いの一つであったインバウンド・訪日観光客への対応施設が、コロナ禍の影響から引き受ける民間ディベロッパー選定が当面、不可能となり「輸出」に特化した市場となること
  • 公設地方卸売市場のゾーンは市場全体の15%に過ぎず、「市場の中の輸出施設」ではなく「輸出施設の一部に卸売市場がある」全国でも初めての市場となること
  • 市場の核となる卸売会社は、青果は豊洲市場の卸「東京シティ青果」をグループ化した神明、水産はマルハニチロの完全子会社となった大都魚類である
  • 大手が揃ったが、「卸売会社」の業務として「輸出」がどの程度のウエイトをかけることができるのか。高度物流棟に入っている企業の入荷は、卸売市場ルートからどの程度入るのか。いずれも市場流通としては初めての経験である
  • 改正市場法の施行によって、国策市場であるが市場業務に対する開設自治体の関与は少なくなる。業者の自己責任となるだけに訪日観光客が全く見込めないままで、「輸出業務」ゾーンと「卸売市場」ゾーンの相乗効果をどのように図ることができるか

さまざまな懸念材料はあるが、ともあれ、本体施設は「市場だより」の中で写真付きで説明されているように今年中に完成する。

また成田新市場の動向は、全国で進められている卸売市場の再整備に「輸出」機能がどのように取り入れることができるかの試金石ともなるだけに期待と不安が半ばするスタートとなりそうだ。

詳しくは以下のアドレスから「新生成田市場PR動画」を参照してください。

www.city.narita.chiba.jp

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「成田市場だより」1号の表紙