卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

奈良県経済活性化の拠点に−市場機能強化と賑わい共存(上)

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県営の中央市場は全国に沖縄、三重、奈良の三市場ある。

いずれも市場整備に直面しているが、その先頭を切って、奈良中央市場が9月県議会経済労働委員会に奈良中央市場再整備基本計画を報告した。

それによると、15万平米ある現在の市場用地を大きく二分し、卸売市場ゾーン(BtoB)と賑わいゾーン(BtoC)に分け(別図)、国道25号線沿いの4万5千平米を買収し効率的な導線を確保し交通渋滞緩和に備える。

従来の市場施設を前提にすると財政規模は卸売市場ゾーンで約200億円になると見られ、民間資金の活用を図る賑わいゾーンと土地買収部分を含めると400〜500億円規模の再整備事業になるだろう。

全国的に多くの卸売市場が施設再整備の課題に直面しているが、問題は市場経営の健全化である。
京都市場のように市場用地を縮小・売却することで再整備費用を捻出するケースや和歌山市場のように賑わい施設を作ることで開設者としての財政負担軽減を計るケースなどあるが、奈良市場は市場用地を拡大し、賑わいゾーンの創出と市場機能の強化を図るという「二兎を追う」路線、地域インフラとして卸売市場を積極的に役立てようという注目すべき方向を選択した。

社会インフラとして位置づけ

奈良中央市場の再整備は、県がイニシアティブをとり、奈良県経済の活性化を図るインフラ施設として位置づけている。

現在の市場用地15万㎡の約半分を賑わいゾーンとする整備方式をとること、およびが国道沿いの土地4万5千㎡を買収拡大することで、仮設移転が不要となり市場機能のコンパクト化と物流動線の効率化を図ることができることが最大の特徴となる。

今後の市場流通は行政の後方支援が特徴となるだろうと思われるなかで奈良県は、交通面など立地の優位性を保つ卸売市場を移転させて再開発を行うのではなく、市場用地を拡大し、卸売市場機能と賑わいゾーンの共存を図ることで、観光客の宿泊者数の増加等の行政政策課題にも貢献させようという方針をとった。(続く