卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

生鮮漁港川越−卸売市場内に直売所

f:id:chorakuan:20190520115445j:plain

卸売会社が市場内に直売所を開く全国初の取り組みが生まれた。

埼玉県の第3セクター市場「川越総合地方卸売市場」内に4月11日、青果、鮮魚、精肉、生鮮三品の直売所「生鮮漁港川越」がオープンした。

この直売所は、川越市場の水産卸「川越水産」が建設し、生鮮三品の専門店のみで構成されている。

キャベツ1個9円・寿司1貫49円

f:id:chorakuan:20190520115814j:plain

オープン当初は混雑しているだろう、連休明けに行った。

写真はその生鮮漁港で売られている寿司握り10貫千円のパックである。

高齢者には10貫は多すぎるほどネタもシャリも大きい。
うまかった。

開設会社の根岸社長にご馳走になったので余計美味しかった。

寿司は安くしようと思えば1貫100円でも売れるが、このネタで1貫100円は苦しいだろうと思う。

それをオープン時は1貫49円で販売、日曜日1日で1万5千貫が売れたという。

青果はキャベツ1個9円で千個が用意され1日で完売した。

売れれば売れるほど赤字だろうが、ともかく集客には役立っただろう。

オープン初日にどれだけ客が来たかよりも、1ヶ月立ち、通常ペースの状況を聞くと土日祝日が2千人、平日千人で落ち着いて来たという。

月1億円のペースだから出だしとしてはまずまずだろう。

「生鮮漁港川越」は約千平米の店内を4ブロックに分け、水産が2ブロック、青果と精肉が各1ブロックになっている。

テナントは水産が古賀商店、青果が丸八青果、精肉が牛蔵。

営業時間は土日祝日が午前8時〜午後7時、平日午前9時〜午後7時。

ピークには何百人も並ぶが、レジは6台、そのうち4台はセミセルフ方式で、マグロの解体販売等で出口のレジから入り口まで並んだ際も5百人を1時間で対応できた。

卸が主導するSCMの取り組み

f:id:chorakuan:20190520120031j:plain

この直売所を経営する川越水産は、豊洲市場の一部上場卸「東都水産」グループ。

川越市場は、川越市など7市2町100万人を供給対象地域とする第3セクター市場で平成6年に開設された。

青果部卸は「東京新宿ベジフル川越支店」で、青果、水産ともに全国トップクラスの大型卸。関連店舗にもヤスノ、アンデス、丸山海苔、岩正など大手が出店している、市場用地20万平米と地方市場屈指の大型市場である。

川越市には、観光バス3千台、年間700万人以上が訪れる観光都市であり、川越市との協議の中で駐車場、食事の受け入れを要請されており、直売所に隣接してバーベキュー、寿司レストラン等も整備される。

川越市場は、すでにケーアイフレッシュなど6社の加工配送センターがあり、国道16号、関越道、圏央道に近い立地条件を生かした加工配送機能が整備されている。

今回の直売所によって、生産から消費者に至る自己完結型サプライチェーンの取り組みとなる。

市場内に直売所を開いた狙いについて、開設者である川越総合卸売市場(株)の根岸孝司社長は、「単なる市場の管理会社ではなく広大な用地・施設を生かす不動産事業を通して第3セクター市場の特性である行政との協力で市場経営に取り組んでいく」と述べた。

また東都水産から出向している松崎豊店長は、「ここで儲けようというのではなく、卸としての販売先開拓を図る新しい事業スタイルを開拓していく取り組みです。加工、配送等の機能と合わせた市場機能の強化を図ることで仲卸店舗などの市場活性化に繋げたい」と述べた。

市街地に位置している卸売市場は多く、関連店舗の活性化に止まらない市場活性化を目指す直売所の設置も今後多くの市場で検討されていくことになるだろう。

(農林リサーチ19年06月号より)