汚染対策を一過性にしてはならない
土壌汚染対策費は2011年の東京都のデータで586億円、それから7年近く対策工事を続け、今も調査は行われている。800億円を超えているという報道もある。
移転前、あれほど騒がれた豊洲市場の土壌汚染について、移転後の今はどうなっているのかだろうか。
2月に行われた土壌汚染対策等に関する専門家会議の説明会を聞いた。
個人的には報道も対応も過剰だと思っていた。
築地での100社を超えたマスコミ陣、抽選となった傍聴席との激しいやり取りは、今も強く記憶に残っているが、それだけに驚いた。
傍聴席はガラガラ、マスコミもぐっと減り、熱気のなさが甚だしい。改めて言うまでもない。
この経費は、結局は税金であり市場会計の負担となる。800億円の投資(?)をどう豊洲市場の活性化に貢献させるのか、私は考えた。
平成29年11月に出された専門家会議の報告書に基づく追加対策工事と今後の方向は次のようになった。
1.追加調査
空気調査は建物1階5か所、屋外4か所、地下ピット10か所 計19か所でベンゼン、シアン、水銀を測定。結果は待機環境基準に適合
地下水質調査は46か所 濃度確認毎月29か所 全体確認17か所
2.これまでの「土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会」から「豊洲市場における地下水等管理に関する協議会(管理協)をおく
取り組むのは次の3点である
①地下水の管理状況
②空気及び地下水質等、環境調査の結果
③その他、情報共有・意見交換が必要な事項
社会インフラ 地域の環境安全監視機能
つまり豊洲市場は今後も地下水の管理や空気汚染の調査を継続するのである。
無駄であるという人はいないだろう。
しかし、これまでの対策は、豊洲市場の開場に向けた環境改善である。そのための膨大なコストをかけた目的が達成されたわけではない。
海水がいつ溢れ出るか、空気の汚染は絶対になくなったのか、その懸念は続くから調査するのである。
そして、その調査は市場の安全というレベルではない。
6000億円をかけて施設に海水が溢れ出し、空気が汚染される。
そうした懸念は東京全体というか、関東全域での火山噴火や地震、津波の最も確実な予測数値の発信となるだろう。
貴重な社会インフラとなることは間違いない。
これだけの費用をかけた災害対策は望めないのではないだろうか。
改正市場法の基本方針でも「災害時等の対応」として事業継続計画(BCP)の策定等が求められている。
豊洲市場の汚染対策を負の遺産にしてはならない。社会インフラとして大きな役割を担うべきである。