統計不正問題で国会が揺れている。
アベノミクスの看板政策の根拠となる数字だけに政治的には重大な問題となるだろうが、個人的には戦後最長の経済成長とか賃上げ率の連続上昇など、どこの世界の話かと思っていただけに不思議ではない。
市場業界の集まりでもよく「景気は上昇しているが業界には流れていない、早く上昇気流を掴めるようにしよう」と言う挨拶を聞く。
「私にも早く流れ込んで欲しい」と思っていたのだが、流れてもいない空気をつかむことはできないではないか。
少し安心した。赤信号みんなで渡れば、の気持ちである。
病院で「みんな海外旅行している。行ったことがないのは私くらいだろう」と話している高齢者がいた。
小学生が「クラスのみんなが持っている」と言うのと同じ発想で、「私以外はみんなハッピー」と思うのは嘘ではない錯覚である。
今回は国の嘘だが、もともと統計やアンケートは嘘ではないが本当でもない。
選挙になると、政党支持率のアンケートがよく出るが、不思議なこと「右」の新聞と「左」の新聞で数字が違う、しかも何回やっても傾向が逆にはならない。
これはアンケートをされる側の国民の意向の違いではなくアンケートする主体の意向の違いではないだろうか。
アンケート調査会社の方と話したことがあるが、調査する目的に沿った答えが出やすいアンケート項目の作成ノウハウがあるようだ。
今はもう誰も口にする者はいないが、第二次安倍政権の政策の柱となっている考え方が「トリクルダウン理論」であった。
経済理論というには恥ずかしいレベルだが、お金持ちを優遇すると滴り落ちるように(トリクルダウン)貧乏人にもお金が回って経済が活性化するという「理論」である。
ネット辞書では「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)する経済理論」と書いてある。
景気が良くなる=給料が上がることではない。
企業減税、所得減税は大企業、お金持ちに有利だが景気好転の数字にはなる。
しかし市民の生活が良くならないと(トリクルダウン・滴り落ちないと)困るのである。票が減る。
だからトリクルダウンのお約束をしたのであり、なんとか良くなったと思ってもらいたい。
だが、トリクルダウンという言葉は忘れても、景気のいい悪いは実感である。
統計やアンケートをいじくっただけでは無理だと私は思う。
大企業やお金持ちがいったん握ったお金を指の間から下々に滴り落とすことはありえないからである。
啄木の手は金も砂も指の間からこぼれ落ちるが、お金持ちの手はブッダの慈悲の手よりも大きく深い。
砂も水一滴もこぼれない。入れば入るほど膨らむブラックボックスである。
トリック(ごまかし)をダウン(浸透させる)させるトリックダウン理論ではないか、と声高に言いたいのだが、トリクルダウン理論は、イギリスの思想家バーナード・デ・マンデヴィルが提唱したということである。
やっぱり!デ・マが言ったデマ理論だったのか、というのが下手なオチである。