卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

お雑煮と酒は正月の神事

2018年12月はじめに山形、秋田、上田、長岡の各市場を回りました。
幸い、雨にも会わず穏やかな日差しでしたが、帰った夜に雨、翌日に東北各地に雪というニュースがあり、それでもう冬なのだという思いが急に強くなりました。

庶民が正月を祝い雑煮を食べるようになったのは室町時代からと言われています。
雑煮は「式三献のなかの酒の肴」であり、「正月に出される餅と野菜で作った煮物」と文献で定義されていますので、正月に酒を飲みながら料理をつまむのは、日本の食文化の伝統に則った正しい作法です。

飛鳥時代には鏡餅が神にお供えされていて、モチは人の生命に力を与える霊験あらたかな食べ 物と考えられていました。
今も各地の寺院で餅つきを行い、正月に食べることは、宗教的な行事として維持されています。
そして神に捧げたモチを、お供えしていた土地の野菜とあわせて煮るのがお雑煮であり、単なる「ごった煮」ではありません。

お雑煮は神と共に食べる「直会 (なおらい)」の主菜です。
お雑煮のレシピが今でも各地で全く違う地域性が強いのは、そうした食文化の歴史の一つの表れです。

食事の時に「いただきます」「ごちそうさま」と手を合わせることに象徴されているように、 食事は神様から頂き神様に感謝を捧げながら、ただ神様から頂くだけでなく神様と一緒に食べる 「神事」です。
寝転がってテレビを見ながらつまむようなものではありません。

経験のある方もおられるでしょうが、仏壇のお下がりで固くなったご飯を食べさせられるのは嫌なものですが、あれを食べるのは子どもの仕事のようで、嫌がって親に叩かれた経験があります。

「神様仏様も、食べるのだったら残さず食べろよ」と思ったのですから、相当ひねた嫌な子どもだったのでしょう。