卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

賑わい機能と市場‐対面販売の課題

移転前の築地市場関連棟の飲食店街消費者は市場のどこに魅力を感じているのだろうか 市場流通における対面販売機能は、主に仲卸と関連が担っている。旧卸売市場法は売買参加者制度と仲卸制度を導入することによって、集荷は卸、評価と分荷は仲卸とする役割分…

卸はなぜ配送機能を重視してこなかったのか

市場業界にとって、物流の「24年問題」が新たな重要課題となっている。 これまで物流問題は取り組みが強調されてはいても「やるべき」論にとどまる部分が大きかった。しかし働き方改革関連法に基づき、24年度からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が…

非接触、非対面型物流と水産市場‐eコマースの取り組みはなぜ遅れたか

卸売市場はeコマースや物流への対応が遅れているとの指摘は昔からあったが、これは必ずしも市場業者の責任によるものではない。市場流通において「市場に来る人に売る」商物一致の取引原則が全面的に改められたのは2020年の改正卸売市場法施行からである…

仙台あおば青果業務開始‐安藤会長、佐藤社長体制

10月1日午前6時 卸売場で業務開始式が行われた 仙台市中央卸売市場(仙台中央市場)の青果卸「宮果」と「仙台中央青果卸売(仙印)が統合し「仙台あおば青果」が発足、10月1日、業務を開始した。代表取締役会長には仙印の安藤堅太郎社長が、代表取締役社…

鯨尾肉を食べた

9月28日 仙台市場上場記念!/仙台水産グループ海鮮市場HPより クジラの尾肉を刺身で食べたーこう言えば市場関係者なら誰もが羨むだろう。だから書こうと思う。2021年9月28日、ニタリクジラが仙台市場に上場され、最高値キロ赤身7000円、尾肉10万円と豊洲…

コロナ禍 明暗くっきり 青果と水産‐青果は半数が売上増、水産売上増は2市場のみ

農水省はこのほど、8月末時点における新型コロナウイルスの卸売市場に対する影響とその対応策についてまとめた。 1.取扱高の状況 コロナ禍における卸売市場の令和3年1-6月は、青果が24市場、約半数の市場がコロナ前より取扱高を増やしたのに対し、水産は34…

能登のさかな

平日の午前中とあってガランとしている能登食祭市場 先日、能登半島に行き一泊した。 金沢からIR石川鉄道の各駅停車に乗って80分、黄金色に波打つ稲畑が続く。能登地域の地層は珪藻土のためハウスが少なく稲作が多い。食べる意欲・能力は衰えたが、能登に…

改正市場法の先駆的役割‐仙台水産の取組に学ぶ

東北の拠点、仙台市場の役割はさらに重要になってくるだろう(仙台市HPより) (「全水卸」9月号より転載) 市場流通は水産、青果ともに長期低落傾向が続いている。近年は横ばいないし若干の取扱増となっているが、社会的に果たしている機能は充分とは言え…

コロナ禍のなかで

東京2020オリンピック・パラリンピックがようやく終わった。 オリパラ反対なら見るなという意見もあったようだ。私はオリパラはやらない方がいいと思っていたが、やれば見るし選手の応援もする。当然だろうと思う。 新型コロナの影響が始まって2年近くにな…

改正市場法と機能強化‐横浜魚類の取り組み

(「全水卸」7月号より一部転載) コロナ禍が続く中、市場流通の変化もまた静かに進行しつつある。施設整備に取り組む中央市場共通の課題は、市場用地の単なる縮小ではなく「余剰地」の設定による機能強化と施設建設・運営におけるPFI(プライベート・ファ…

横浜本場青果部再整備進む‐新たに三棟の物流施設

横浜市中央卸売市場本場(以下:横浜本場)青果部の再整備が進んでいる。横浜市は平成27年に横浜南部市場を廃止し、12万㎡を物流エリア、5万㎡を賑わいエリアと分け、横浜本場の補完機能を担う場とした。 そして横浜本場も水産部の低温化につづき、青果部も…

公設民営化から民設公営化の動き‐公設と民営の接近

(農林リサーチ2021年9月号より一部転載) 改正卸売市場法の下で特徴的な動きがもう一点、公設市場におけるPFI(民間活力導入)による公設と民営の接近である。 改正卸売市場法以前にも、公設市場の民営化は進められていた。その「公設市場の民営化」と…

高崎市場「関越冷蔵」‐小売支援助成受けドライブスルー機能整備

群馬県高崎総合卸売市場の関越冷蔵(松本武社長)はこのほど、「高崎市まちなか商店リニュアル助成事業」の補助金を受け、ドライブスルー販売等に活用している冷凍庫を補修・増設した。これは高崎市がコロナ禍で苦戦する商店街支援の一環として打ち出した小…

川崎南部市場‐業者負担でワクチン職域接種

川崎南部市場事務棟で行われたワクチン接種 卸売市場における職域接種が行われ始めたが、豊洲市場などワクチン不足によって延期を余儀なくされた市場も多い。 そうした中で川崎市南部市場は、指定管理者「川崎市場管理株式会社」と青果卸「川崎南部青果」の…

R&C売上1400億円卸に‐首都圏青果市場の激変加速②

人口15万人の上田市を拠点にした1400億円卸が誕生する 神明とともに、首都圏市場流通の新風となるのがR&Cホールディングスである。 R&Cホールディングスは、長野県連合青果と長印によって2015年10月に設立され、堀雄一連合青果会長が社長に就任した…

東京青果の神田青果グループ化の意義‐首都圏青果市場の激変加速①

狭隘化解消が大きな課題となっている大田市場卸売場 令和2年度売上2200億円と圧倒的なシェアを持つ東京青果は6月21日、東京神田青果をグループ化すると次のように発表した。 「2021年6月 18 日付で、東京青果株式会社(代表取締役社長:川田一光)は東…

市場再編の動き加速

2018 改正卸売市場法制定後の市場の動き 2021(R3) 0628 東京青果が東京神田青果グループ化 秋にも 2021(R3 )0428 連合青果がぐんま県央青果全株取得 0601 日付 社名そのまま 2021(R3) 0621 宮果と仙台中央青果卸売(仙印)10 月 1 日合併 仙台あおば…

富山市がPPP支援を国に要請

富山市はこのほど富山市公設地方卸売市場の再整備について、自民党下村政調会長に対し国の財政支援を求める要請を行なった。 富山市は大和ハウスなど8社の事業連合と、33年間のリースによるPPP方式による契約を2021年4月30日に正式調印している。 しかし、3…

成田新市場関連棟は仕切り直し

2022年1月開場予定の成田新市場の関連棟は成田市が直接整備することが決まった。令和3年5月28日、成田市公設地方卸売市場運営審議会が開かれ了承された。 成田新市場は、青果、水産の公設市場部分と高機能物流棟を除く施設は民間による整備、運営を行うこ…

2040年代の市場ビジョン−東京都市場経営指針

東京都はこのほど「東京都中央卸売市場経営指針」を策定した。 現在ある11中央市場の市場会計の改善を目指す長期的な経営指針である。2040年代の市場のあり方を経営面から検討するという、改正市場法で廃止された「10年単位・5年見直し」の市場整備計画…

富山市場方式はなぜ国の補助対象にならないか

富山市場方式とは、富山市公設地方卸売市場の再整備に当たって、富山市が出した「市場敷地全体に事業用借地権を設定し、事業者が市場施設と民間収益施設を一体的に整備した上で引き続き所有し、市場施設を市が賃借し運営を行う」方式である。(以下、事業の…

公設市場再編が焦点

改正市場法による卸売市場の認定数は中央市場が40都市、65市場であり、地方市場は911市場(公設143、第3セクター31、民設737)となっている。これに対し許認可制時代の令和元年度市場データ集の市場数(平成30年度)は、中央市場が40都市、64市場で、地方市…

レンゴー青果が県央青果全株取得‐R&C売上1400億円卸に

北関東の中核に位置する群馬高崎市場(高崎市場HPより) 2021年4月28日、ぐんま県央青果(阿久澤 吉廣社長・資本金1億5千万円))は長野県連合青果(堀陽介 社長・以下レンゴー青果)に全株を譲渡することで合意、契約したことを公表した。取得日は6月1…

富山公設地方市場再整備−定期借地権で公設市場も民間が建設

(参照)富山市 富山市公設地方卸売市場 2021年4月1日、富山市は富山市場用地123,138㎡全てを対象にした再整備事業の優先交渉権者に「新とやまいちば創生プロジェクトチーム」(以下;事業連合)を選定した。民間が公設市場の全てを整備し、その一部を市が…

桐生市場用地一部返還−12年間の無償貸付期間終了

桐生市場は業界の努力で配送施設等が整備されている 2009年に民営化した群馬県の「桐生地方卸売市場」(みどり市笠懸町阿左美)は、民営化後10年間無償貸借を行い、さらに2021年3月まで2年間延長してきたが、4月からは有償とすることを議会決定した。これに…

「成田市場だより」発行

成田市は2021年3月26日付けで、「成田市場だより」を発行した。 来年1月開業を予定している成田新市場について、年度末である3月末段階での開設準備の状況について詳しく情報開示している。その内容についてはすでに紹介した部分も多いが、開設自治体として…

物流と情報の重要性

春を待つ 前橋市内 馬場川通り 新たな物流政策大綱と食品流通合理化検討会 物流と情報が国の重点政策として取り組まれている。食品流通については農水省だけでなく経産省、国交省の三省共同による「食品流通合理化検討会の中間取りまとめ」が2020年4月に出さ…

サステナブル経営と民間経営手法−東京都が中央卸売市場経営指針(案)を発表

今年も桜を見ることができた(21年3月1日) 「東京都中央卸売市場経営指針(案)」が発表された。主要な内容は20年先、2040年代の卸売市場の姿と、サステナブル経営の二点であり、具体的な課題として7点をあげている。(参照 東京都中央卸売市場経営指針) 【20…

「Withウイルス」は人類の宿命か

新型コロナウイルスが日本で蔓延し始めて1年以上が経過した。新たな変異株が国内でも発生するなど、なお収束の気配はない。 新型ウイルスが人類の歴史に登場したのは、紀元前1350年頃のエジプトで発生した天然痘と言われているが、その後も次々と発生してい…

公設市場機能と民間機能の共存−成田新市場21年度開業にメド(下)

「全青協」21年02月号より転載、「上」の続き 輸出機能に特化した成田新市場、21年度中に完成する (出所)成田市場の輸出拠点化プロジェクト|成田市 3.公設卸売市場エリアは15%−輸出機能特化の成田新市場 機能優先の卸売市場を具現化 旧卸売市場法の基準…