市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか

新幹線花巻駅にある大谷翔平と菊池雄星の記念展示場

新幹線花巻駅にある大谷翔平と菊池雄星の記念展示場

食料システム 2026年7月号/通巻367号より転載)

画家ゴーギャンの代表作「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」は彼の人生の集大成ともなる絵画の哲学です。
竹橋の国立近代美術館で見た時は、壁画並の大きさに驚きましたがあまり理解できませんでした。しかし最近、宇宙の成り立ちや生命の誕生などを眠剤代わりにネットで聞くようになり、突然、ゴーギャンのこの絵を思い出しました。

宇宙は138億年前に無からビッグバンによって誕生、今も膨張を続け、やがて460億年で寿命が尽きます。宇宙も地球もやがて消え、人類はもっと早く消えることは確実です。我々人類は宇宙の「無」から誕生し、僅か100年足らずの時を経て再び「無」に還ります。

父親は私が中学時代に水害で亡くなりましたが、母親は「お父さんが玄関に立っているのを見た。帰ってきた」と真顔で話していました。全ての物質は質量不変であり、亡くなっても粒子として宇宙に飛散するだけですから、空から見守ってくれると感じることは当然あるだろうと思います。

3千年以上前に書かれた仏教経典は、仏様は「色即是空空即是色」(色は即ちこれ空、空は即ちこれ色)と悟り人々の苦しみを救ったと説いています。色=物質、空=原子(反物質)ですから「色=空」です。3千年前の宗教哲学と宇宙物理・量子力学の到達点は全く重なります。

また万物流転、生者必滅、会者定離など無常を表現する言葉は多くありますが、これは宇宙の法則「エントロピーの増大」(全ての物質・宇宙は寿命があり秩序はゆっくり崩壊する)です。時間は逆行しません。
ただし時空(時間・空間)は相対的です。光と同じ速さで動いていれば時空は変わりませんし宇宙船での1時間は地上の1時間よりも長い。これを頭の中だけで理論化したのがアインシュタインで、後に立証されクラウドなどITに活用されています。

日本の昔話「浦島太郎」は、竜宮城から地上に戻ると知人は全員死んでいて乙姫様のお土産を開けるとあっという間にお爺さんというお話です。
これはどう考えてもおかしい。乙姫様が恩人にそんなことをする筈がありません。人ではないのですから。乙姫様の救いであるとも言われtいるようですが、それもおかしい。

竜宮城は異世界ですから宇宙の重力に逆らって光の速さで動いています。だから中にいる乙姫様も魚たちもゆっくり時間が過ぎます。竜宮城の1日は地上生活の10年、20年と同じ長さです。
地上に知人は居なかったのですから、浦島太郎はおそらく帰った時は「実年齢100歳・見かけ年齢20歳」で、それから彼は150歳くらいまで元気に暮らし、老衰で死んだのです。浦島太郎もエントロピーの法則には逆らえませんから。これが「真説浦島太郎」だと思います。

浦島太郎の名もなき作者は、アインシュタインより早く「時間は相対的・逆行しない」という教訓を残してくれました。エンデの時間どろぼう「モモ」も同じです。

時間の矢は一方通行、若返りはできません。崩れていくのは宇宙も地球も私も貴方も同じです。浦島太郎のように時間を延ばしてゆっくり楽しみたいと思います。

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