市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

「うおいち」の目指すもの~OUGホールディングス 橋爪 康至社長に聞く

OUGホールディングス 橋爪 康至社長

OUGホールディングス 橋爪 康至社長

「うおいち」と「ショクリュー」を中核とするOUGホールディングス(以下OUGグループ)は、長く市場流通におけるリーディングカンパニーとして走り続けている。
2006 年(平成 18 年)にホールディングス制度を導入し、商社機能を持つ市場流通(うおいち・約 2,100 億円)と川下を網羅する市場外流通(ショクリュー約 1,300 億円)を柱に、養殖、加工、物流、小売等、グループ19 社を網羅した「新しい水産物流通サービス業」を構築している。その相乗効果の結果として売上 3,500 億円、利益 1.5% 以上を計上する超優良企業となった。
こうしたOUGグループから見ると、改正市場法5年となる市場流通は一周遅れか二周遅れに見えるのだろうか、グループを率いるOUGホールディングス株式会社の橋爪康至社長に聞いた。(全水卸 2026年3月号より転載)

その他関係会社1社(海外法人 水産物の輸出入)、関連会社3社

市場単体利益でなくグループ相乗効果

― はじめにOUGグループ全体の概括をお話しいただき、次に営業の二つの柱の一つである市場営業本部を中心にお伺いします。
OUGグループの昨年度決算は連結で売上 3,500 億円、経常利益 58 億円の過去最高益となっています。昨年度は業界全体が好調でしたが、OUGグループの経常利益 1.6%は、市場卸として突出した数字です。

橋爪= OUGグループは平成 18 年(2006 年)に設立した純粋持株会社のOUGホールディングス株式会社の下で 19 社のグループ企業によって構成されています。昨年度は経常利益 58 億 9100 万円の最高利益となりましたが、グループ全体の利益ですから市場卸としてだけの利益ではありません。
水産市場卸は元々低収益であり総売上金額の1%以上の収益率を上げることは中々難しい業態です。私たちは「うおいち」を中心に関西圏の5市場で営業しているほか、海外からの主要商材の一括仕入れ、養殖や物流など必要なグループ企業を増やしてきました。
そうしたグループ企業の相乗効果をさらに活かすためにOUGホールディングス株式会社としてグループ経営に舵を切りました。まだまだ改革の途中ですが、2020 年の市場法の改正は、我々にとっても追い風になっています。

「うおいち」は市場営業本部と商社機能を持つ商品事業本部が柱

― ここ数年、コロナ禍と少子高齢化社会の下での食料政策として「食料システム法」など産地から消費までを一体的に包括する法整備が行われています。この法整備は食料の持続的供給をいかに図るかという食料安保の課題であり、この政策のもとで水産や青果、食品といった業態別の縦割り行政から部分的ですが変化しつつあります。橋爪社長はホームページでも「生産から消費までトータルでコーディネートする新しい水産物流通サービス業」と言われています。

橋爪= OUGグループは、「うおいち」を中心とする卸売市場事業とショクリューを中心とする市場外流通を中心としており、「うおいち」の営業部門は生鮮・加工品中心の市場営業本部と世界各国から主要商材を一括仕入れする商社機能を持つ商品事業本部が二つの柱です。「うおいち」は現在、大阪本場と東部、大阪府、それに和歌山と大津の5市場において卸売会社として営業しています。それに九州にはショクリュー西日本支社、各営業所があり、関東にはショクリュー東日本支社と各営業所があります。

鮮魚事業を強化する意味

― OUGグループの扱いは冷凍品主体で取引は相対・買付が主力です。あえて鮮魚事業を強化する目的は何でしょうか。

橋爪= 市場取引は受託・セリから買付・相対となっていることはご承知の通りです。その中で手数料業者から差益業者になるためには、付加価値をどう生み出すかがポイントです。そのために一つは量販店・ホテル・外食向け等の安定収益源となる販売先の確保・拡大に取り組んでいます。それにはショクリューとの連携が必要です。
二つ目は、養殖事業者と連携し、加工機能を含めた販売機能の拡大を図ることです。
OUGグループは 20 年以上前から養殖事業に取り組んでいますが、海洋資源の不安定さが増す中で今後は天然資源に依存しない集荷・仕入れ体制が不可欠です。養殖の重要性は今後さらに増すことになるでしょう。兵殖を核とした扱い拡大も必須です。
そして市場の一番の強みは、全国から集荷される生鮮です。これに養殖をあわせた全社グループ総合体制で、国内、海外への拡販に注力してまいります。鮮魚事業はそれらの役割を担っています。そうした体制構築の土台として鮮魚事業の重視を位置付けています。

アジア・北米中心に海外事業拡大

― OUGグループは商社機能による仕入れも大きな柱となっていますが、近年は輸出にも力を入れています。状況はいかがですか。

橋爪= 輸入冷凍品の売り上げ比率は高いので近年の円安や為替変動によって収益構造に大きな影響が出ています。特に中国向けは国際情勢や規制強化の影響で大きく落ち込んでいます。国内における少子高齢化の進展も見据えて、うおいち・ショクリュー連携のもとアジア、北米を中心にした輸出を強化しています。
卸売市場の集荷機能を活かし鮮魚を海外輸出するハブ機能の役割を担うことを目指していますが、素材そのものでは難しいので市場で加工機能を持ち付加価値をつけた販売に取り組んでいます。その為には仲卸との取組も必須です。

「関東マーケットの深耕・拡大」とは?

― 経営計画の重要課題として「関東マーケットの深耕・拡大」があげられています。販売強化だけでなく「商品力 / 販売力の強化」「商物分離型の営業拠点 / 物流拠点の整備」が課題となっています。「うおいち」は、大阪に3市場、和歌山、大津に各1市場の5市場を展開しています。九州と関東にはショクリューの各営業拠点があり、関東はショクリューがすでに年間売上 500 億円規模になっています。関東地域において新たな市場進出もありうるのでしょうか。

橋爪= 福岡に九州営業所があり、関東はショクリューを中心に取り組んでいますが、このエリアに新しくどこかの市場に卸として参入することは考えていません。課題にあげているように商品力と販売力は一体のものですし、商物分離取引は 24 年問題からも避けて通ることは出来ませんので「商物分離型の営業拠点/ 物流拠点の整備」が最優先の課題となっています。
首都圏は最大の商圏ですし、ショクリューの売り上げも拡大してきましたので手狭になってきた横浜の施設を移転し来年には稼働する計画です。

― OUGホールディングスはすでに「市場卸も」グループにあるという規模になっていますが、市場流通についての評価はどうなのでしょうか?

橋爪= OUGホールディングスは「大阪魚市場」を中心に設立したものですし、旧市場法の下で市場卸として生き残るために「新しい水産物流通サービス業の創造」に必要な機能拡大をはかり、それが結果として 19 社のグループ体となったものです。そのスタンスに変わりはありません。これからも、必要に応じて新規投資や不採算のグループ会社の将来も検討していきます。

関西地区5市場の変化

― OUGグループは関西地区に5市場あります。かつて5市場の卸を、機能を分けて担うことも考えておられたようですし、将来的には大阪は3市場から2市場になるのではないかとも言われていますが、これについてはいかがでしょうか。

橋爪= 旧市場法時代は市場ごとに完結する取引が基本的な規定であり、そのためにOUGグループとして関西各市場に進出せざるを得ませんでした。しかし、小売部門・外食部門ともに全国規模に広がっており、これに単独市場・単独卸として対応することは困難になっています。流通のあり方が違ってきており、国も改正市場法・食料システム法によって産地から小売までの連携を進めていますし、現在はDX(デジタル・トランスフォーメーション)改革を中心的な施策として進められています。
本来なら各市場で対応できる商圏のスーパー、量販店も大阪本場での取引が増えており、狭隘化が進んでいます。この対応のためにも現状の5市場機能を含め、物流と情報を中心にしたDX改革を急いでいます。

システム戦略ついて

― そのDX改革についてですが、OUGグループは業務が広範囲にわたることもあって基幹業務システムの構築に長年取り組んでおられます。システム戦略について一言お願いします。

橋爪= いま取り組んでいるシステムは、事業会社の基幹業務システム導入と社内データの活用等の集約による一括仕入れ・集中処理による効率化です。本社に集約し各拠点に配分するモデルケースとして取り組んでいます。

市場流通の将来は売買の場から物流・情報等DX拠点に

― ありがとうございました。最後に市場流通の今後について一言お願いします。

橋爪= OUGグループは「新しい水産物流通サービス業の創造」により企業価値の最大化を目標にしています。
市場流通は今後、競争から協業の時代に入ることは明らかですが問題はその具体化です。第一次産業重視の政策はビジネスチャンスであり、水産卸売業は消える産業ではありませんが成長産業でもありません。
単独市場、単独卸で生き残ることは難しく、協業と拠点集約の経営設計が生き残りの条件であると思います。そうした点では現在の市場数、市場卸の統合・再編ハブ機能を持つ物流拠点化が進んでいくだろうと思います。
その対応策として、今後、生産から消費に至る食料システムのプラットフォーム構築等を市場共通の課題として検討していかなければならないのではないかとも思っています。
核となる市場業務は同業他社の同志と共に将来を考えて取り組んでまいります。

― ありがとうございました。

取材を終えて

「全水卸」誌上において、これまで改正市場法後の市場の変化と卸の取り組みについて、さまざまなケースを紹介してきた。「うおいち」は久しぶりである。

OUGホールディングスは市場流通の卸として突出しており、あまり他市場の参考にならないのではないかとも思った。
しかし、「うおいち」の変化は、改正市場法による変化というより市場法を改正に導いた先取りの変化である。東京の卸より、一足も二足も早く改正市場法時代に求められる「食料の持続的供給を維持できる卸像」の土台を構築している。現状はすでに市場流通の巨人として突出した存在であるが、食料安保に貢献できる「生産から消費までトータルでコーディネートする新しい水産物流通サービス業」としてはスタートしたばかりだろう。

橋爪氏のお話で、次のような言葉が印象に残った。
「単独市場・単独卸として採算をとることは困難」
「卸売市場は競争の時代から協業の時代」
「DX改革が中心」
「低利益前提の経営設計が基本」
「第一次産業重視の政策はビジネスチャンス」

これらは一見、普通に見えるが 3,500 億円を扱い、経常利益 1.6%をあげる企業のトップが言うと迫力がある。
この言葉を勝手に繋ぎ合わせると次のようになるだろう。
「第一次産業重視の政策はビジネスチャンス」だが、市場卸は「低利益前提」の業種なので「単独採算を取ることは難しい」どうするか、相対、商物分離による取引が認められた改正市場法時代は、単独市場だけの自己完結取引ではなく大阪本場を中心とした「商」とそれを支える「物流」拠点の「DX改革が中心」になるだろう。商物一致時代は市場ごとの「競争の時代」となるが今後は新たな市場進出ではなく他社・他市場との「協業」がキーワードになるだろう。

実際に、豊洲市場は単体市場としての取引だけでなく、関東全域のDX拠点としての機能が強まりつつある。大阪本場も同じ状況が進んでいる。
そうした中で次のステージは東京、大阪を柱に、北海道、東北、中部、中四国、九州の市場ネットワークをどう活かすか。マルハ、ニッスイの「二強競争時代」から「拠点卸間の協業」システムによるプラットフォームづくりを目指す時代を迎えることになるだろう。
これは全く個人的な印象だが、築地の業界紙で長く働いた身として、企業としてもトップとしても、「うおいち」は、良い意味での「市場人」の雰囲気が残っており、マルハグループではあるが子会社ではなく独自の経営体制を維持していることも嬉しいことだ。橋爪氏の後任として「うおいち」社長に就任した石井享一氏も、あいさつ程度だが、見た目も中身も好漢である。

私は三重県生まれで、あまり郷土意識はないが橋爪社長も三重県出身と聞くと少し嬉しい。三重県人は名古屋、京都よりも大阪に親近感を持っている。伊勢商人の知恵と大阪人のバイタリティが合わさると無敵だろう。橋爪氏69歳、石井氏59歳、市場流通の変革のステージは着々と整備されつつある。

この記事を書いた人